天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

駱駝

偶蹄目ラクダ科ラクダ属2種の哺乳類の総称。まぶたは二重、鼻孔も自由に開閉できて砂塵を防ぐことができる。背の瘤は脂肪の貯蔵所で、食物をとらないと瘤は縮小する。ヒトコブラクダは野生種ではなく、北アフリカ、北西アジアなどで飼われる。フタコブラク…

著莪の花

シャガは、アヤメ科アヤメ属の多年草。漢字で射干、著莪、胡蝶花などと表記する。森林周辺の木陰や、湿ったところに群生。中国原産で、古い時代に日本に入ってきた帰化植物である。 紫の斑の仏めく著莪の花 高浜虚子 山の娘は犬がお供や著莪の花 田畑三千女 …

孔雀

キジ科の鳥。サソリなどの毒虫や毒蛇類を好んで食べるため益鳥とされる。さらにこのことから、邪気を払う象徴として孔雀明王の名で仏教の信仰対象に取り入れられた。羽が青藍色のインドクジャクは、インドの国鳥。 さやさやと戦がせひらく羽の音孔雀の意志を…

躑躅

つつじの種類は多い。野生種で20種以上、園芸種ともなれば数百にのぼる。名前の由来は、花が次々に咲くところから「つづき咲き」あるいは形から「筒咲き」が転訛したものという。漢字は物のうずくまる姿、びっしりと花をつける様子を表す。 つつじ燃ゆ土か…

太陽

驚いたことに太陽の半径あるいは直径の正確な値は未だ計測されていないという。金環日食の際に、ベイリー・ビーズと月観測衛星「かぐや」による精密な月の山谷の高さ・深さから、太陽の半径を測ることができるらしい。その結果がNHKのニュースで報じられた。…

鑑賞の文学 ―俳句篇(27)―

白牡丹といふといへども紅ほのか 高浜虚子 [山本健吉] 大正十四年五月、大阪での作。・・・中七の「いふといへども」と、 おおらかに停滞した調子が、白牡丹の豪華凄艶な美しさとよく照応 している。初五の字余りから中七へかけての緩徐調が、結びの 「紅…

三椏

「ミツマタ」はジンチョウゲ科の落葉低木。中国が原産地で古い時代に日本へ渡来した。どこをとっても枝が3本に分れるところからの命名。樹皮の繊維が強いので、コウゾとともに和紙の原料になる。葉の出る前に開花する。 三椏の花や手鼻をかむ男 川崎展宏 三…

金環日食

五月二十一日朝七時半頃に、曇り空の狭間から金環日食を見ることができた。宇宙の出来ごとは、わが国の古い文献にいくつか記述されていたことは、よく知られている。世界的にも有名なのは、藤原定家の日記『明月記』に記された超新星爆発である。皆既日食に…

勝長寿院跡

鎌倉に源義朝の墓があるとは、今迄まったく知らなかった。NHKのテレビで「平清盛と源義朝」という特集番組を見ていて教えられた。正確には、殺害された尾張の野間大御堂寺と鎌倉勝長寿院の二か所である。 平治の乱で清盛に敗れた義朝は、東北に逃れるべく…

ミモザ

マメ科オジギソウ属の植物の総称。熱帯アメリカに500種ほどある。また、フサアカシア、ギンヨウアカシアなどのマメ科アカシア属花卉の俗称。日本には明治初期に渡来した。 ミモザ咲き海かけて靄黄なりけり 水原秋桜子 沸き立つといふ咲きぶりの花ミモザ …

山吹

バラ科ヤマブキ属の落葉低木。八重咲き種のヤマブキには実がならない。古歌にも好んで詠まれ、しばしば蛙とともに詠み合わせられる。このあたりの歴史や太田道灌と山吹の伝説については、他に詳しい解説がWEBなどにも載っているので省略する。 ほろほろと…

初夏雑詠(1)

五月はどこを歩いても新緑がまぶしく風が心地よい。まして藤の花、薔薇の花などの香の風に包まれると生きている幸せを感じる。MLBやプロ野球も佳境に入り、毎日結果が気になる。 三人の僧が庭掃く躑躅かな 紅椿一輪うかぶ手水鉢 うぐひすの谷渡聞く切通し…

恐るべき歌集

先日、神奈川近代文学館に斎藤茂吉展を見に行った際に知った歌集『萬軍』をアマゾンに注文して購入した。読んでいくにつれ、とんでもない歌が詠まれている恐るべき歌集との印象を持った。独裁国家の宣伝もかくやは、と思えるほどの詠みぶりなのだ。当時の戦…

新緑

初夏を象徴するのが新緑である。冬の間、枯葉を落して裸になっていた樹々に水のしたたるような若葉が繁る。まさに生命そのもの。夏の季語。みどり、緑さす が傍題。 摩天楼より新緑がパセリほど 鷹羽狩行 子の皿に塩ふる音もみどりの夜 飯田龍太 みどりさす…

卯の花

空木(うつぎ)の花。空木はユキノシタ科の落葉低木。幹が中空なので、空木の名前がある。箱根うつぎの花は、白、紅、紫と変化するので雪月花を一度に見ると言われるほど美しい。「卯の花ぐたし」は、五月雨の前に降る霧雨のこと。 うのはなの絶間(たえま)た…

勿忘草(わすれなぐさ)

ムラサキ科の多年草。原産地のヨーロッパでは水湿地に群生する。巻尾状の花穂に藍色の小花を多数つける。友愛や誠実の象徴。 雨晴れて忘れな草に仲直り 杉田久女 空白の日記に挟む勿忘草 澤田緑生 忘れな草の瑠璃色に露とどまりて光りぬオフィーリア 狂ひた…

沈丁花

中国原産の常緑低木。雌雄異株で雌株は少ない。挿し木で増やす。花のかおりを沈香と丁香にたとえたところに名前の由来がある。あるいは、香りは沈香で花の形は丁字であるからとの説もある。俳句の傍題には、沈丁、丁字、瑞香、芸香(うんかう) など。 門灯を…

生誕130年・斎藤茂吉展

4月28日から6月10日まで、神奈川近代文学館において資料の展示と講演会が開催されている。ずいぶん以前になるが、山形県上山市にある齋藤茂吉記念館を訪れていろいろな資料を見たことがある。今回の展示も多彩で初めて見るものが多かった。特に原稿類…

藤の花

藤はマメ科の蔓性落葉樹。日本産のフジ属にはノダフジとヤマフジの2種がある。ノダフジは本州から九州の低山地や平地に生え、茎は長くのびて他の物にからみつく。ヤマフジは近畿から九州の山野に生える。花序はやや短く、紫色の蝶形花は大きい。茎は巻き方…

鑑賞の文学 ―短歌篇(28)―

小池 光『うたの人物記』をやっと読み終えた。外出の際に電車の中で読み継ぐので時間がかかった。この本で最も頻度高く取り上げられる歌人は斎藤茂吉で21首ある。次いで共に12首の塚本邦雄と岡井隆である。 以前に「短歌に詠まれた人名」というテーマで…

鈴蘭

花は美しいが有毒。牛馬に食べられないため、牧草地に群生していたりする。実は緑色から赤に変わる。別名:「君影草」、「谷間の姫百合」。花言葉は「意識しない美しさ、純粋」。 すずらんのりりりりりりと風に在り 日野草城 鈴蘭はコップが似合ふ束ね挿す …

ミヤコワスレ

山地に自生する深山嫁菜の園芸品種。名前の由来は、承久の乱に敗れて佐渡に流された順徳天皇が、その地で咲いていたこの花に慰められ、都を忘れるほどだと言ったという伝説による。 むらさきのはつきり都忘かな 後藤比奈夫 喪に替ふる白衿都忘れ咲く 野見山…

ヒタキ科の漂鳥で全国に分布する。雄の方が一回り大きいが、体色では区別はつかない。春告鳥の名もある。冬期の鋭く短い鳴き声を「ささ鳴き」、春になってケッキョケッキョという鳴き声を「谷渡り」という。夏も終りの頃には「老鶯(おいうぐいす、ろうおう)…

花海棠

海棠は中国原産のバラ科の落葉低木。花木として庭木や盆栽にされる。玄宗皇帝が楊貴妃の眠たげな様子を「海棠の睡り未だ足らず」と称した故事から「睡花」「ねむれる花」の名がある。また美しい女性のうちしおれた姿を「海棠の雨に濡れたる風情」という。こ…

短歌は五句三十一音

三枝昂之編著『今さら聞けない 短歌のツボ100』(角川学芸出版)には、短歌に関わる紛らわしい言葉使いや作歌、鑑賞についての基本的な事柄が、100項目について解説されている。35名による分担執筆である。その中に「短歌は五句三十一文字、五句三十…

二輪草

キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。ガショウソウとも。多くは一本の茎から特徴的に二輪ずつ花茎が伸びるところが和名の由来。根茎で増えるため、群落を作りやすい。東アジアに分布。 庭苔の青にうづもれふふみたる二輪草の蕾小さきくれなゐ 五味保義 風な…

キンポウゲ

キンポウゲ科の多年草。日当りのよい草地にはえる。漢字で毛莨、金鳳花などを当てる。葉の形からウマノアシガタとも。 手捕りたる鮒の荒息きんぽうげ 岸風三楼 金鳳花ひとり下校の男の子 辻田克己 きんぽうげ山雨ぱらりと降つて晴れ 岡田日郎 温かに洋傘(か…

豌豆

西アジアから南欧原産のマメ科の野菜。日本の主産地は北海道。さやの柔らかいサヤエンドウとさやの硬いムキエンドウがある。夏の季語で、傍題に莢豌豆、絹莢、グリンピース がある。 ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ 桂 信子 豌豆や子がそつと出す通知表…

諸葛菜

諸葛孔明が広めたことからついた名前とされるが、オオアラセイトウ、ムラサキハナナ のこと。原産地は中国で、ヨーロッパ南部に帰化しているほか、日本には江戸時代に輸入されて栽培されたものが野生化している。花大根と俗称されるが、厳密には別種らしい。…

木五倍子

「きぶし」と読む。日本中の山地に生えるキブシ科の落葉低木。新葉の出る前に前年の枝の葉腋から長さ3cmから10cmの花穂が垂れて、4弁の淡黄色の花をびっしりつける。 枝しなひきぶしの金の鎖垂れ 岡田日郎 きぶし咲き山に水音還りくる 西山 睦 いた…