天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ジギタリス

和名は、狐の手袋。欧州原産のゴマノハグサ科の多年草。五、六月に茎頭に花穂を出し、鐘状の紅紫色の花を下向きに開く。有毒。乾燥した葉は利尿・強心剤になる。 ああ五月螢匐ひいでヂギタリス小さき鈴ふるたましひの泣く 北原白秋 ジギタリス毒にて薬 ほど…

ロベリア

南アフリカ原産のキキョウ科の二年草。少々横に這う性質がある。春から夏に開花し秋まで見れる。花言葉は悪意、敵意。花色と形から瑠璃蝶々という和名があるらしいが、ほとんど使われない。 空いろのつゆのいのちのそれとなく消なましものを ロベリアのさく …

森林浴

以前にもご紹介したが、鎌倉湖はもとは散在ガ池と言った。大船や岩瀬の水田を潤すために江戸時代に山を切り開いて造られた湖である。久しぶりに訪れて、「せせらぎの小径」「馬の背の小径」「のんびり小径」「パノラマ小径」などをめぐった。木々の若葉は青…

柿若葉

柿の若葉は黄緑の時が一番の見頃に思える。柿の葉は奈良県吉野では、鯖鮓をくるむのに使われる。柿葉鮓である。 茂山やさては家ある柿若葉 蕪村 しんしんと月の夜空へ柿若葉 中村汀女 柿若葉目ざめ安らかに照り匂ふこの村の道を行き行くわれは 古泉千樫 旦(…

桜えび

サクラエビ科。河川の流れ込む深海の泥底質の水域を好む。駿河湾の富士川河口付近で多く獲れる。生食や干しエビにする。河川敷に一面に干された桜えびと富士山の取合せは、春の風物詩である。 ゆふぐれが一つ古びるさくら蝦 八田木枯 波音の筵成したり桜えび…

棕櫚の花

花棕櫚とも。ヤシ科の常緑高木で、特に日本産のワジュロをいう。雌雄異株。五月頃葉の間から太い軸が出て、淡黄色の粟粒のような小さな花を多数つけ、穂状に垂れる。南国情緒のあふれる花である。 梢より放つ後光やしゆろの花 蕪村 村中にひよつと寺あり椶櫚…

満潮と鳥山

若葉の風が心地よい江ノ島を、辺津宮、中津宮、奥津宮と歩いた。天気予報では、温度が上昇するので熱中症に注意ということであった。以前、江ノ島で熱中症になりかけたことがあったので、注意して歩いた。暑い中を歩く時は、気分的に余裕を持って無理をしな…

翁草(2)

名前の由来は、白く長い綿毛がある果実の集まった姿を老人の頭にたとえたところから。 別にネコグサとか善界草(ぜがいそう)という異称もある。全草にプロトアネモニン・ラナンクリンなどを含むので有毒。漢方においては根を乾燥させたものが白頭翁と呼ばれ、…

翁草(1)

キンポウゲ科オキナグサ属の多年草で、本州から九州の日当りの良い山中の草原にはえる。六枚のがく片は花弁状で外側には白毛が密集し、内側は無毛で暗赤紫色。花期が終ると花柱が白くなり長い羽毛状に伸びる。万葉植物名の「ねつこ草」は翁草のこと。 芝付(…

流氷(3)

オホーツク沿岸に見られる流氷は、彼岸のころからゆるみ始め、四月下旬には消滅する。 流氷や宗谷の門波荒れやまず 山口誓子 白炎をひいて流氷帰りけり 石原八束 ある流氷女賊をのせしごと急ぐ 細谷源二 流氷の来る前ぶれの夜々の凪 金子幽霧 流氷や手を振ら…

流氷(2)

北海道オホーツク海沿岸に押し寄せる流氷群は、明治以降の北海道の開拓により知られるようになった。源はシベリアのアムール川である。二月中旬から三月中旬頃に、最も多く接岸する。砕氷船で流氷観光も行われている。 海が見たくてはるばる来たれば流氷と白…

流氷(1)

三月になると寒帯の海を覆っていた氷が割れて、氷の塊が風や海流に乗って南へ漂流する。北海道オホーツク海沿岸に接近する情景は、春がやってきたことのあかしになる。 はてしなき流氷(るひよう)の海の照(てり)白しきびしき もののつひのしづけさ 岡部文夫 …

海鳴り(2)

うねりが砕ける時、巻き込まれた空気が水のすき間から噴出するときに起るという。これなら洞窟などなくても海鳴りはする。 幾ひらの苔の入りたる氷柱あり海鳴りの音も聞こえず なりて 山下陸奥 草鞋買ひてはきかへをれば海なりの音ははるかに地を つたひくる…

海鳴り(1)

江ノ島の岩屋洞窟のある岩場にぼんやり坐っていたら、海面は穏やかでさしたる波もないのに海鳴りが聞こえる。それも今までに聞いたことがないほどに大きい。岩場にはイソヒヨドリも海鳴りを聞いていた。児玉神社の楠若葉は見事であった。 勝運の神とし祀る楠…

藤を見に行く(2)

藤の季節とくれば、小田原城の「御感の藤」も見逃せない。二宮神社入口の蓮の濠の傍に藤棚がある。この藤も毎年見に行っている。二宮神社境内や天守閣の傍にある楠の大木の若葉がなんとも清々しく気持ちがよい。御用米曲輪の発掘はこの日も続いていた。 小田…

藤を見に行く(1)

今年も横須賀菖蒲園に藤を見に出かけた。菖蒲園と名前がついているが、石楠花や藤も沢山植えてあり、それぞれの花の時期がくれば見る価値がある。藤の種類は多く名前がついている。遠目には白藤か紫藤かの二種類だが、近くでよくよく見ると違いが分る。 見慣…

秩父の狼信仰(2)

前衛俳句の推進者・金子兜太の故郷である埼玉県秩父郡皆野町に行ってきた。兜太は、「おおかみ」への思い入れが強く、句集『東国抄』に狼の連作二十句がある。内の十句を次にあげる。 おおかみが蚕飼の村を歩いていた おおかみに螢が一つ付いていた おおかみ…

秩父の狼信仰(1)

オオカミ信仰の中心となっている秩父地域には、かつて多くのオオカミが棲息していた。今日ではすでに絶滅したと考えられる山犬・ニホンオオカミが、その地域の人々から「山の神」の化身とされていた。オオカミは農作物に被害を与えるイノシシやシカ、サルな…

長瀞

秩父鉄道・長瀞駅で降りて、川の方に歩いて商店街を抜けると眼下に河岸と岩壁の景色が広がる。荒川上流部の渓谷で、国指定の名勝・天然記念物になっている。県立長瀞玉淀自然公園と言い、全長約6km。ライン下りと特別天然記念物の岩畳が有名で、カヌーやラフ…

芝桜

さきたま古墳群を訪ねた翌日、秩父市羊山公園の芝桜を見に行った。秩父電鉄の御花畑駅から歩いて牧水の瀧、武甲山資料館によってから芝桜の丘に行った。牧水の瀧には、若山牧水と妻・喜志子のそれぞれの歌碑が立っている。文字は喜志子の筆。 秩父町出はづれ…

武甲山

武甲山資料館に入って武甲山に関する知識を得た。三十分ばかりのビデオも見て人々と山の関係を知ることができた。独立峰で別名を秩父嶽、妙見山、武光山ともいう。名前の由来は、日本武尊が自らの甲をこの山の岩室に奉納したという伝説から来ているらしい。…

さきたま古墳公園

ゴールデンウィークの初めに行田市に行って、この古墳群を見た。あいにくの雨で、あまり時間を割けなかったが、県立さきたま史跡の博物館に展示されている国宝の品々には迫力があった。その代表が金錯銘鉄剣である。 前方後円墳や円墳がこの地区にまとまって…

生殖の池

藤沢の里山の新林公園を歩いた。幼い若葉のみどりが清々しい。古民家の周辺にはおおきめの溜池とちいさめの池がある。溜池の方は人の出入りができないように柵が立てられている。覗き穴があるのでそこから見ても生きものの姿はめったに見えない。たまに亀が…

浦島草

里芋科の球根植物。本州、四国を中心に、北海道や九州の一部にも分布する。春、太い花穂が伸びてくる。花穂から伸びる細長いを、浦島太郎の釣り糸に見立てた。それが命名の根拠。 父征きし故郷の浜に糸たれて咲く花浦島草と呼ばれき 東 淳子 ひつそりと庭草…

おだまき

漢字で苧環と表記する。キンポウゲ科の多年草で、高山に自生するミヤマオダマキが原種という。園芸用に多く栽培されているのは西洋苧環。なお「おだまき」の名は、花の姿が紡ぎ糸を巻く苧環に形が似ているところからきている。 をだまきやどの子も誰も子を負…

春たけなわ(2)

極楽寺、成就院、長谷寺、光則寺と歩いてきた。長谷寺には相変わらず観光客が多い。紫陽花の前に著莪の花が咲き誇っている。藤棚の藤も咲き垂れている。光則寺の庭の山藤はみごと。今回はじめて翁草を見つけた。 柏手をうつ極楽寺八重桜 藤棚の白き花房蜂を…

春たけなわ(1)

里山の舞岡公園に出かけた。田起こしの済んだ田圃には、蛙の声がからころと響いて田植えの時期が近いことを告げている。山にはまだ八重桜が咲き残っている。燕の姿も見かける。 田起こしの済みし里山蛙鳴く 佇めば蛙鳴きやむ田んぼかな 鳴くこゑに惹かれて探…

雉子(4)

明るい草地に生息している。地上を歩き、主に草の種子、芽、葉などの植物性のものを食べるが、昆虫やクモなども食べる。繁殖期のオスは縄張り争いのために「ケーン」と大声で鳴き縄張りを主張する。両翼を広げて胴体に打ちつけてブルブル羽音を立てる動作を…

雉子(3)

北海道と対馬を除く本州、四国、九州に留鳥として分布している。東北地方に生息するキタキジ、本州・四国の大部分に生息するトウカイキジ、紀伊半島などに局地的に生息するシマキジ、九州に生息するキュウシュウキジの4亜種が自然分布していた。もともとキジ…