天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

鑑賞の文学 ―俳句篇(26)―

春風や海の細道三千里 長谷川櫂『海の細道』 今年1月20日に紹介したのは、NHK制作・著作のテレビ番組「俳句紀行シリーズ 海の細道をゆく」であったが、このほど詳細な紀行文が本になって刊行された。テレビでは、長谷川櫂の露出が多いことやその話が物…

ハタオリドリ科の鳥。ユーラシア大陸の中・南部に広く分布する。日本では留鳥として人家に近く見られる。人間に親しい。穀物を食べるので害鳥だが、昆虫も食べる。 ねやの上に雀の声ぞすだくなる出たちがたに子や なりぬらん 曾禰好忠 黒く汚れ痩せて小さき…

花桃

バラ目バラ科サクラ属の耐寒性落葉低木。原産地は中国で、花を観賞するために改良されたモモ。江戸時代に日本に来てから、品種改良が行われ、種類が豊富になった。 ぱらりつと桃の紅見えそめし隣の垣根春の一つづき 今井邦子 峡のみち笛吹川を越えゆきて桃咲…

田浦梅林

JR横須賀線の田浦駅から歩いて20分ほどのところに小高い山があり、麓から山頂にかけて2700本に余る梅が植えられている。根元には水仙が植えられていて、その株数は7万5千もあるという。この梅林は、昭和9年に皇太子(現在の天皇陛下)の生誕を祝って地…

山茱萸

さんしゅゆは中国、朝鮮が原産のミズキ科の落葉高木。春黄金花とも。初秋に赤く熟す実は薬用になる。古くから庭木として植えられた。 山茱萸の花の数ほど雫ため 今井つる女 雲来しと雲の行きしと山茱萸黄 後藤比奈夫 妻がよぶ年の端にわれを呼びしごと山茱萸…

菜の花と河津桜

伊豆の河津と相模の松田山では、菜の花と河津桜の満開を同時に見ることができる。松田山には毎年見に出かけている。今年は彼岸の時期に満開になった。詳細に調べると松田山に咲いている桜には、河津桜の他に、寒緋桜、おかめ桜、春めき桜などがあるらしい。…

短歌vs俳句

俳人の長谷川櫂は、東日本大震災の後の十二日間に、彼の思いを短歌にまとめ『震災歌集』として発表した。その後で俳句を詠んだ。短歌と俳句の違いを次のように述べている。要約する。 「短歌は人の心の動きを言葉にして表現することができる。ことに嘆きや怒…

菜の花

アブラナ科越年草の油菜の花。わが国では古くから油菜が栽培され、種子から菜種油をとった。現在では西洋油菜に取って代わられた。また菜種油をとらなくなったので、菜の花自体の栽培がめっきり少なくなった。以下に、江戸中期の俳人・与謝蕪村と現代の俳人…

若布

ワカメは褐藻類アイヌワカメ科の一年生海藻。各地の沿岸の低潮線付近から10m程度の海底に生育する。特に冬から春によく育つ。鳴門の若布は有名。それを詠んだ山口誓子の作品を4句次にあげておく。漢字で他に、和布、稚海藻、裙蔕菜などと書く。春の季語…

樟の木

関東南部から九州にはえるクスノキ科の常緑高木。数百年を経て大木になる。葉は長楕円形で尖り革質で光沢がある。材は香気があり樟脳に利用される。楠とも書く。 和泉なるしのだの森の楠の木の千枝にわかれて物をこそ思へ 夫木抄・読み人知らず いかが見ん七…

湯河原梅林

満開ではなかったがやっと名にし負う梅林に出会えた。湯河原駅からバスで十五分ほどの幕山公園である。新緑の時期だと山頂まで登ってくるのだが、この時期ではその気になれない。 ただ、満開の梅林を山頂から見下してみたい。見えるかどうか心もとないが。ふ…

春菊

キク科の一年草で地中海地方が原産。わが国には江戸時代に渡来したらしい。浸しや鍋料理に欠かせない野菜になった。春の季語。 春菊や袋大きな見舞妻 石田波郷 春菊や貧しき飯を炊ぎつつ 神谷九品 白菜に春菊が入り魚(うを)が入り大血縁(だいけちえん)と な…

山羊(やぎ)

偶蹄目ウシ科ヤギ属の哺乳類の総称。エーゲ海の諸島、カフカス、イランなどに分布する野生のノヤギを飼いならしたものという。紀元前7000年ころから家畜として飼われたらしい。用途としては、乳用、毛用、肉用に大別される。 あたたかし草もみぢ分けみづうみ…

コジュケイ

キジ科の鳥。中国南部が原産。1920年頃に狩猟鳥として東京、横浜に放鳥された。漢字で小綬鶏と書く。現在では、北海道以外の各地の平地や低い山の藪に棲む。鳴き声は「チョットコイ」と聞こえるというが、これは俗説。 小綬鶏といふ名を知りて啼くきけば焼つ…

鑑賞の文学 ―俳句篇(25)―

鎌倉を驚かしたる余寒あり 高浜虚子 [山本健吉] 大正三年作。こういう淡々と叙して欲のない句は、説明の言葉 がない。・・・鎌倉の位置、小ぢんまりとまとまった大きさ、 その三方に山を背負った地形、住民の生態などまで、すべて この句に奉仕する。試み…

熱海梅園

二月十二日のブログで取り上げた熱海梅園をふたたび訪れた。梅の花は満開でさすがに見ごたえがあった。今回、新しく気づいたのは、まず園内に句碑が六基あること。 梅が香にのつと日の出る山路かな 松尾芭蕉 夏すでに漲る汐の迅さかな 武田鶯塘 月光は流れに…

寒牡丹

冬牡丹のこと。真冬、自然の状態で開花する。鎌倉では鶴ケ丘八幡宮の牡丹園が見どころ。 冬牡丹 咲きし証しの 紅散らす 安住敦 ひらく芯 より紅きざし 冬牡丹 鷹羽狩行 そのあたりほのとぬくしや寒ぼたん 高浜虚子 寒牡丹見て戻り行く苑のみち豊かに展く水柱…

春蘭

蘭科の常緑多年草。東洋ランの一種として観賞用に多数の品種が栽培されている。花は緑色を帯びてよい香りがする。刺身のつまや塩漬にして湯をそそぎ飲料にもする。なお、東洋ラン以外のシュンラン属をシンビジウムと呼ぶ。 春蘭のほそき葉さきのするどきは爽…

福寿草

キンポウゲ科の多年草。毒草である。1月1日の誕生花で、元日草の別名もある。北海道から九州の山林に生育する。江戸初期から栽培されている。 一人居のにはかに日差福寿草 川崎展宏 福寿草黄金花ぐきほのぼのとふふごもる春にあひにけらしも 尾山篤二郎 一鉢…

鑑賞の文学 ―短歌篇(25)―

今に思へば鴨長明幸ひなりき大津波を知らず一生(ひとよ)を 終へき 長谷川櫂『震災歌集』 長谷川櫂は周知のように現代の俳人であるが、東日本大震災後の十二日間に、短歌を詠み歌集にして発表した。その中の作品が、昨年七月一二日の国会中継「衆議院東日本大…

東日本大震災一周忌

去年の今日、わが国にとってとんでもない災害が発生した。東日本の大地震、大津波、原発のメルトダウン。この後で詠んだわが短歌を、掲載された「短歌人」から集めてみた。鎮魂にはならないが、苦しい思い出として残る。 地震(なゐ)きたり揺れはじめたる本棚…

長鼻目ゾウ科に属する最大の陸生哺乳類。皮膚が厚く毛が少ない。1腹1子で寿命は約60年。 次の歌の中御門天皇は第114代天皇で、在位は江戸時代の1709年から1735年まで。宮中に象が連れてこられた時のものらしい。 時しあればひとの国なる獣もけふ九重に見…

食肉目ネコ科の哺乳類。インド、東南アジア、中国、シベリアに分布。夜行性。寿命は約15年。 とらにのり ふるやをこえて あをふちに みつちとりこむ つるぎたちもが 万葉集・境部王 みるやいかにやまのこのははおちつきてみちにあたれる虎の まだらを 風雅…

桃の節句

平安時代、日本には五つの節句(人日・上巳・端午・七夕・重陽)があった。当時貴族にとっては、それぞれが季節の節目の身のけがれを祓う大切な行事だった。その中の一つ「上巳(じょうし)の節句(三月三日)」には、貴族階級の子女が、天皇の御所を模した御…

隕石

惑星空間にある固体物質が燃え尽きないで惑星表面に達したもの。多数の破片になって落下する場合を隕石雨という。ニッケル、鉄、ケイ酸塩などの含有率により、鉄隕石、石鉄隕石、石質隕石の3種に分類される。世界最大の隕石は、ナミビアに落下したもので最…

鮫(さめ)

サメ目に属する軟骨魚類をいう。生息場所も大きさや形も様々。フカと言うこともある。ホオジロは人を襲うので人食い鮫と呼ばれる。肉は蒲鉾の原料に、鰭は中華料理に用いられる。「フカヒレ」が高級料理としてもてはやされるため、鮫を捉えたら尾鰭だけ切り…

早春賦3

島崎藤村が大磯に移り住んだのは、昭和十六年二月のことであった。六十九歳。昭和十八年に「夜明け前」の続編である「東方の門」に着手していたが、八月二十二日に脳溢血で死去した。七十一歳。地福寺境内に梅の木に囲まれて夫妻の墓が並ぶ。 横浜市中区の三…

ピラカンサ

中国原産のバラ科の常緑低木。生垣や切花用に栽培される。初夏に白色五弁花をつける。秋から冬にかけて赤橙色の実をかたまってつける。ピラカンサス、橘もどき とも。 日なた風日かげの風とまじりふくピラカンサスに沿う 秋の道 高安国世 ピラカンサ赤くなだ…

わが国では、奈良・平安時代に唐の長安や洛陽をモデルにして平城京や平安京などの都城が造営され、東北地方には砦として渟足柵などの城柵が設営された。大がかりなものでは、多賀城や胆沢城が有名。中世以降には、山城から平城へと発展した。 城の櫓に千俵の…

犀(さい)

奇蹄目サイ科の総称。第三紀後半に繁栄したが、現在ではクロサイ、シロサイ、インドサイ、ジャワサイ、スマトラサイの五種類が棲息するだけになった。体重は1トンから4トンに達する。シロサイが最も重い。草食性。嗅覚・聴覚は鋭いが、視覚は鈍い。 うき身…