天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

小判草

単子葉植物イネ科コバンソウ属の一年草。小判草という名前が付いているが、ヨーロッパ原産で日本には明治時代に観賞用に導入された。 小判草引けばたやすく抜けるもの 星野 椿 この浜を死守すると砂に坐す道に乱れ揺れつつ小判草咲く 芦田高子 野に摘める小…

紫陽花―俳句編―

紫陽花は日本原産だが、原種は額紫陽花(額の花)である。十八世紀にイギリスに伝わり、西洋紫陽花(ハイドランジア)が生れた。 あぢさゐやよれば蚊の鳴く花のうら 暁台 あぢさゐや澄み切つてある淵の上 蒼虬 あぢさゐの藍をつくして了りけり 安住 敦 あぢ…

紅茶

百科事典の説明を引用する。紅茶はチャの葉を発酵させて乾燥したもの。製法、飲用法とも中国が起源で、18世紀からヨーロッパで広く愛用され始め、茶葉の色からブラック・ティーと呼ばれ、英国では午後の喫茶が伝統となった。日本には幕末の開港とともにも…

さくらんぼ

桜の実、桜桃。サクランボは「桜桃の実」で、桜桃はバラ科の落葉高木。中国原産、明治十一年にわが国に渡来した。他の桜に遅れて深紅色の小花をつけ六月頃に実を結ぶ。食用。近年は米国産の大粒で色の濃いダークチェリーが輸入されている。日本産のさくらん…

梅雨雑詠(1)

紫陽花の季節である。神奈川県にも紫陽花の名所がいくつもある。鎌倉では、明月院、長谷寺、成就院など。南足柄では、開成町あじさいの里、大雄山参道など。 暁の極楽寺の空ほととぎす あぢさゐの参道のぼる成就院 咲き出づる時は白無垢額の花 土牢のくらが…

浜昼顔

ヒルガオ科の多年草。世界に広く分布し海岸の砂地に群生する。茎はつる性で砂の中を這う。果実は球形で、種子は黒い。 点綴の浜昼顔となりにけり 山田みづえ あはあはと咽をくだる水が欲し浜昼顔の蕊も乾けり 中島義雄 まことしづかな浜昼顔とし吾は咲き海を…

昼顔

ヒルガオ科。アサガオ同様朝開花するが昼になっても花がしぼまないことからこの名がある。つる性の多年草で、地上部は毎年枯れる。春から蔓が伸び始め、夏にかけて道ばたなどに繁茂する。万葉集には「かほがはな」、「かほばな」 として四首に詠まれている。…

西行終焉の地

富田林駅からのバスは一時間に一本あるかないかの頻度なので、行きはタクシーに乗った。西行が生涯を終えた弘川寺は、なんとも鄙びた山麓にある。花の季節を過ぎて梅雨に入っているので、空は晴れていても誰ひとり訪ねてくる人はいない。 弘川寺について境内…

茶畑

茶は葉を飲料とするツバキ科の常緑樹で、チベットあたりが原産地。漢代の中国ですでに飲まれていた。日本には奈良時代に伝来し、鎌倉時代以降に各地に広まった。静岡、宇治、狭山などが名産地。一人当たりの消費量は、英国が最高というから面白い。紅茶の一…

小夜の中山・再訪

小夜の中山を初めて訪れたのは十一年前の五月であった。JR金谷駅からタクシーに乗って、久延寺まで行き、あとは日坂まで旧東海道を茶畑沿いに歌碑・句碑を見ながら歩いた記憶がある。どういうわけだか、西行歌の「小夜の中山」の場所を、近代になって初め…

駝鳥

ダチョウ科の鳥。アフリカの草原に群生する。飛べないが、時速90キロに達する速さで走る。現存の鳥類中最も大きい。その卵もまたしかり。 孤独とは息(やす)らふためか風の中われと駝鳥は 柵をへだてて 小中英之 吾と同じ目線の高さ柵ごしに駝鳥は夏の憂ひ運…

もののふ

武士、つはもの。上代においては、朝廷に仕えた官人をも指したが、中古以降は武勇をもって仕え、戦陣に立つ武人のみを意味した。 もののふの矢なみつくろふ籠手(こて)の上に霰たばしる 那智の篠原 源 実朝 命をば軽きになしてもののふの道より重き道あらめや…

青梅

青葉の陰に丸い顔をいくつも並べている情景は、微笑ましい。夏の季語。傍題に、梅の実、実梅、小梅、煮梅、豊後梅、信濃梅、甲州梅 など。梅が実る季節の長雨を梅雨と言う。 うれしきは葉がくれ梅の一つかな 杜国 青梅に眉あつめたる美人かな 蕪村 青梅に手…

日日草

ニチニチソウは春蒔きの一年草。花の色には白や紫紅色がある。丈夫な植物で鉢植えや花壇でよく見かけるが、成分に抗腫瘍性のアルカロイドがあり、製薬原料になる。別名「その日草」という。日日草より長く咲く花に「百日草」、それより長く咲く花に「千日草…

枇杷

バラ科の常緑果樹。古くから日本の南部に野生していたらしい。堅い木は木刀に、葉は鎮咳・去痰薬、入浴剤になる。果実は生食の他、缶詰にする。 枇杷買ひて夜の深さに枇杷匂ふ 中村汀女 やはらかな紙につつまれ枇杷のあり 篠原 梵 口中にふくらむばかり枇杷…

芥子

ケシは、罌粟とも表記するが、ケシ科ケシ属に属する一年草。ちなみに、芥子という表記は本来カラシナを指す言葉なのだが、ケシの種とカラシナの種が似ていることから、室町時代に誤用されて以来、定着したものという。栽培の歴史は古く、四大文明が興った頃…

菖蒲―俳句編―

花菖蒲は仲夏の季語。傍題に白菖蒲、菖蒲園、菖蒲田がある。 はなびらの垂れて静かや花菖蒲 高浜虚子 花菖蒲ただしく水にうつりけり 久保田万太郎 文を解くごとしや朝の白菖蒲 角川照子 きれぎれの風の吹くなり菖蒲園 波多野爽波 参考までに燕子花(かきつば…

菖蒲―短歌編―

和歌では菖蒲と書いてアヤメと読んだ。つまりアヤメと詠まれたのは菖蒲を詠んだのである。つくづくややこしい。よってここでは和歌の例を省略する。 菖蒲一束わがしかばねをおほはむに恥づ人殺し得ざりしこの手 塚本邦雄 紫に咲ける菖蒲の一ところ花明かりし…

横須賀菖蒲園

菖蒲はサトイモ科の常緑多年草。日本、インド、北米などに生育。花の色は、白、黄、紫、青、ピンクなど。ややこしいことに、昔は菖蒲と書いてアヤメと呼ばれていた。菖蒲は水陸どちらにも生育する。江戸時代に品種改良が盛んになった。 横須賀菖蒲園には江戸…

マーガレット

カナリア諸島原産のキク科の多年草。和名は木春菊。葉はシュンギクに似る。園芸品種は多彩。さし芽で増やす。語源は、ギリシャ語で真珠を意味する。ドイツ語ではマルガレーテとなり、西欧では代表的な女性の名前である。花言葉は「恋の占い」。夏の季語。 マ…

オランダイチゴともいうバラ科の多年草。食用にするのは花托が肥厚した部分。石の保温性を利用した石垣促成栽培が知られていたが、ビニールハウスが普及してからは減少した。銘柄では、「栃おとめ」が有名。野生種から食用種まで苺の種類は多い。 花の芯すで…

チューリップ

ユリ科チューリップ属の植物。球根ができ、形態は有皮鱗茎。原産地はトルコのアナトリア地方とされる。生産地ではオランダが知られており、各国へ輸出されている。トルコからオランダにチューリップが伝わったのは16世紀頃。日本では、富山県や新潟県で大規…

鑑賞の文学 ―俳句篇(28)―

五月雨をあつめて早し最上川 芭蕉『奥の細道』 [高浜虚子] ・・・広い国原に降る五月雨をこの最上川だけに集めているような 感じがするところにこの句の強味があるのである。 [山口誓子] ・・・もとより最上川がさみだれを集め、みずから流速を増した の…

青葉潮

五月、太平洋岸を流れる黒潮を、漁師たちは「青葉潮」と呼ぶ。鰹の豊漁にもなるので「鰹潮」とも。俳句では「夏の潮」の傍題になっている。夏潮、青潮 も同じ。 青葉潮みちくる一期一会なる 細見綾子 ねむる子のまぶたのうごく青葉潮 藺草慶子 青葉潮ひびく…

麒麟(きりん)

鯨偶蹄目キリン科に属する。和名「キリン」は、鄭和が連れ帰ったキリンを「麒麟」として永楽帝に献上した故事にちなみ、近代になって命名されたものであるという。中国語では「麒麟」ではなく、「長頚鹿」(長い首の鹿)と呼ぶ。心臓から脳までの高低差は約2…

雉(きじ)

キジ科の鳥。「きぎす」とも言うがこれは古名。日本の国鳥である。未だ食べたことはないが、肉は美味という。 雉をよく詠んだ歌人に岡部文夫と塚本邦雄がいる。両者の例歌を以下にあげる。 岡部文夫の歌: 嘴(はし)にして冬の泉をのむときに雉といへども安け…

初夏雑詠(2)

ニュースでも話がでていたが、最近、日本にくる燕の数が減っているらしい。私が住む横浜市のはずれには田園が多いが、空を飛んだり電線に止まって鳴いている燕の姿がめっきり少なくなった。多ければ多いで、あちこちに巣をかけて糞を落されるのには迷惑する…

蛇(へび)

爬虫綱有鱗目ヘビ亜目に分類される爬虫類の総称。大きさは最大10mになるアミメニシキヘビやオオアナコンダから、10cm程のメクラヘビ類まで、様々である。 なほ夏のほてるたましひ死を懸けて逐へどがらがら蛇の戀人 塚本邦雄 秋の蛇舌ほのかなり人はなほ戀の…

薔薇

バラ科バラ属の植物の総称。野生種は約200種ある。北半球の各地に分布する。日本には、ノイバラ、テリハノイバラ、タカネバラ、サンショウバラ、ハマナスなど十数種が野生しているという。栽培種は最も高度の雑種であり最も代表的な観賞の花木である。バ…

竹の子。古くは、たかむな、たかんな、たこうな と称した。竹には多くの種類があるが、真竹、淡竹以外はすべて中国からの伝来種という。 竹の子の力を誰にたとふべき 凡兆 たかんなを掘つて来しかば尼汚る 飴山 實 たけのこの皮剥ぐ音のひとしきりくりやにあ…