天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

万両

ヤブコウジ科の常緑低木で関東地方以西に生える。花も実も乏しい真冬に、真赤な小粒な実をぎっしりつけるので、庭などに見つけると心ゆかたになる。千両とともに縁起のよい植物として重宝される。ちなみに、百両(別名:からたちばな)や十両(別名:やぶこ…

八つ手

ウコギ科の常緑低木。日蔭や大気汚染の場所でもよく育つ。冬になると茎頂から円錐花序をだして白い小花を鞠状に集めて八方に開く。 花茎(はなくき)のあらはに太くわかれ咲く 八ツ手の花は群れつつ小さし 三ヶ島葭子 接吻(くちづけ)をかなしく了へしもの…

ある朝に

切符を買いに藤沢駅まで歩いて往復した。行きは境川沿いに歩き、帰りは遊行寺境内から小栗堂に立ち寄り旧東海道を歩いた。夜が明けると森や林に眠っていた様々の鳥が餌をとりに田や畑、野川に飛び出してくる。先日は鵜だったが、今回は白鷺(コサギ)を何羽…

ニシン科の真鰯をさす。ウルメイワシ、カタクチイワシにも使う。沿岸性の表層回遊魚。大きさにより中羽、大羽などと呼ぶ。 日は暮れぬ鰯なほ干す旋陀羅が暗き垣根の 白菊の花 北原白秋 小鰯を簀の子に干してひろき庭町は雑音の なき真昼なり 松村英一 幼子と…

わが国の神話として、『古事記』には天鳥船(あめのとりふね)、『日本書紀』には、天鳩船(あめのはとぶね)が出てくる。旧約聖書の創世記ではノアの箱舟が有名。エジプトのピラミッドからは、あの世と現世を行き交う手段として船が発見されている。最も原…

祈願

北鎌倉の建長寺半増坊から山頂づたいに天園ハイキングコースを歩き瑞泉寺に出た。このコースは今年になって初めて歩く。ただ残念ながら南の空には雲が広がっていたので、富士は望めなかった。半増坊では、祈祷の声をスピーカーで流していた。瑞泉寺の中は、…

ガンカモ科。淡水に棲むものに、マガモ、カルガモ、オナガガモ、トモエガモ。海に棲むものに、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ など。但し、公園の池などには混在して泳いでいるのをよく見かける。例えば、上野不忍池。冬に北から渡来し、春には北へ帰る…

鵜の朝

鵜はペリカン目ウ科の水鳥の総称。世界には約30種類が分布する。わが国には、ウミウ、カワウ、ヒメウ、チシマウガラスの4種が棲息。鵜飼にはウミウを使う。上野不忍池は、世界的に珍しい大都市の中の鵜のコロニーらしい。万葉集には、12首が詠まれてい…

栗鼠

齧歯目リス科。わが国にはキタリス(エゾリス)、ニホンリス、ホンドリスなどがいる。近年は台湾リスが渡来し、繁殖してわが世を謳歌している。これは1935年に伊豆大島の公園から逃げ出したのがもとになって、神奈川、静岡、岐阜、大阪、和歌山、長崎など日…

河豚

昨年はフグ毒のことを中心に取り上げたと思うが、河豚はフグ科と近縁種の魚の総称。日本産には約34種いる。トラフグ、マフグ、ショウサイフグ、ヒガンフグなどが食用になる。食用の歴史は大変古く、各地の貝塚から骨が出ているという。 まづ煮立つふぐのし…

海豚

イルカ。クジラ目歯鯨類の小型のもの。5m以上をクジラ、それ以下をイルカとして区別することがある。 霧のためおもく濁れる海をやぶり背をひからせて 海豚むれ飛ぶ 石槫千亦 我が船をきほひ追ひ来るいるかの群ほどへて見れば なほし追ひ来る 川田 順 はろ…

探梅行(2)

今年もまた熱海梅園に行ってきた。梅まつりの初日である。この梅園の由来は、入口の碑に書かれている。明治六年文部省初代医務局長になった長与専斎が明治十八年にわが国初の温泉療養施設開設に伴い、この地一万坪に梅三千株を植えたのが始まりという。その…

蝋梅

中国原産、ロウバイ科の落葉低木。わが国には江戸時代に渡来したらしい。芳香があり正月の生花としても珍重される。普通、芯にあたる部分が暗紫色だが、黄色のものを特に素心蝋梅という。 臘梅に斎庭は雪を敷きにけり 宮下翠舟 臘梅や鋏の音に又こぼれ 曽我…

富士を詠む

正月に見る夢で縁起の良いものが、順に一富士二鷹三茄子という。現代ではあまり話題にもならないし、まして夢に見ることなど稀であろう。時間がゆっくり流れていた時代のめでたさなのだ。 富士が初めて歌に詠まれたのはいつの時代であったろうか。文学では平…

探梅行(1)

これも新年のわが行事になってしまったが、梅の花を探して下曽我に行ってきた。もちろん、二月に入れば小田原梅まつりが開かれ、流鏑馬などが開催されるので充分に堪能できるのだが、それが待てないのだ。 空には多少の雲が浮んでいたが、奇麗に晴れており、…

福寿草

キンポウゲ科の多年草で山地に自生する。新春に咲く金色の花は、まことに幸福な気分にさせてくれる。名前の由来であろう。「さちぐさ」とも言う。江戸時代以来、観賞用に栽培されて変種も多い。花は常に太陽に向いて咲くというが、茎が伸びる前に地面すれす…

寒牡丹

真冬に咲く。冬牡丹、冬深見草 などともいう。藁や笠で囲って雪を避ける。牡丹の変種で、冬に咲かせるために夏咲きの花芽を摘除する。 かうかうと風は過ぎゆく寒牡丹 丸山哲郎 寒牡丹日月穹(そら)を駆けゐたる 河原枇杷男 冬牡丹人形箱を出でて見よ 長谷川…

七福神

元日から七日までの間に、七福神(恵比須、大黒天、毘沙門天、福禄寿、弁財天、布袋、寿老人)を祀ってある寺社を次々に巡り歩いて参拝する。室町時代に七福神に仮装した風流行列が出てきた。江戸時代にますます盛んになり、その変形として正月に七福神のそ…

新春の鎌倉(2)

今年も定番の散策コースから歩き始めた。すなわち極楽寺、成就院、権五郎神社、長谷寺、光則寺 である。葉をすべて落とした木立は、真っ青な新春の空をさえぎることもない。落葉さえ見当たらない境内は、まことにあっけらかんとして素っ気無い。この内、権五…

新春の鎌倉(1)

元旦に出むくほど信心深くない私は、成人の日三連休の初日、鎌倉八幡宮に参拝した。その前に北鎌倉駅で下りて円覚寺に寄った。ところどころに蝋梅の花を見かけた。鶴岡八幡宮では、例年のように牡丹苑が開いていた。もう何年になるか毎年入園しているが、花…

津波注意報

4日、ニューギニア付近でマグニチュード7.6クラスの大地震が発生した。NHKテレビの速報では、津波の心配はないとあった。ところが江ノ島に来ると消防車が走り回り津波に注意を呼びかけていた。新たな地震が起きたのかと疑った。いつもなら江ノ島の岩…

椿

ツバキ科の常緑高木。わが国の自生種には海岸に分布するヤブツバキ、積雪地帯の山中に生えるユキツバキ、屋久島に生えるリンゴツバキなど3系統がある。現在は園芸品種が圧倒的に多い。園芸品種は室町時代に基礎が作られたという。「椿」という漢字はなく、…

七草粥

正月七日は古来、七草粥を食べて邪気・万病を除くという風習がある。芹、なずな、御形、はこべら、仏の座、すずな、すずしろの一セットをコンビニで売っているところもある。いにしえは六日に乙女たちが野で摘んでいた。 日のさしていくらか雪の解けゆけば七…

鴛鴦

おしどり。ガンカモ科。万葉集には5首に詠まれている。古名は「をし」。 人漕がずあらくも著(しる)し潜(かづ)き する鴛(をし)とたかべと船の上に住む 万葉集・鴨君足人 水の上に浮寝をしてぞ思ひしるかかれば鴛は鳴くにぞありける 和泉式部 落葉せる…

ヒヨドリ

スズメ目ヒヨドリ科ヒヨドリ属に分類される鳥。ヒヨドリの亜種として日本には、ダイトウヒヨドリ、 ハシブトヒヨドリ、 タイワンヒヨドリ、アマミヒヨドリ、リュウキュウヒヨドリ、オガサワラヒヨドリ などがいるという。「ヒーヨ!ヒーヨ!」と鳴くところから…

2009新春詠

昨年の暮れから正月三が日にかけて、関東の太平洋岸は近年になく穏やかな晴天が続いた。初日の出を近所の小高い山や岬に立って、ありがたく迎えた人達も多かったようだ。無信心の私と言えば、一日は家族総出で江ノ島水族館に行き、二日三日は箱根駅伝を家の…

偶蹄目イノシシ科。豚の原種。「ゐ」「しし」とも言い、肉は山鯨とかぼたんと呼ぶ。山鯨は獣肉忌避時代の呼び名だが、ぼたんは唐獅子牡丹からきたという説と肉を薄く切って巻くと牡丹の花に似ているところからという説がある。 秋の季語であるが、これは晩秋…

湖底に沈む(2)

盆や年の暮になるとダム湖を訪ねてみたくなる。湖底に沈んだ村の人々の望郷の念に共鳴するからである。2008年の暮もまた神奈川県清川村の宮ケ瀬を訪ねた。宮ヶ瀬ダムは、清川村、相模原市、愛川町にまたがる中津川上流部に建設された多目的ダムである。…

湖底に沈む(1)

都市の飲料水を確保するために、あるいは豪雨のたびに氾濫する下流の町村を救援するために、川の上流にダムが作られる。ダムが建設されるとその周辺の村々は湖底に沈むことになるので、そこの人々の生活と将来が奪われる。当然反対運動が起きる。政治的な決…

フクロウ科の鳥。世界には約140種、日本には10種が分布している。このうちミミズクは、頭側に耳と呼ばれる長い羽毛を持つものの総称である。俳句では冬の季語。実は留鳥なので四季を問わないのだが。 梟や聞耳立つる三千騎 正岡子規 梟をみにゆき一人帰…