天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

カササギ

カラス科の鳥で、中国・朝鮮か北九州に来る天然記念物である。古典では七夕説話で星の仲立ちをし、翼で橋を渡す鳥として知られている。「鵲の橋」については、2009年7月11日にご紹介済み。光る物を集める習性がある。雑食性。カシャカシャカシャという鳴き声…

光苔

ヒカリゴケ科ヒカリゴケ属の原始的なコケ植物で、本州中部以北の洞窟や大樹の根本などの薄暗い湿地に生える。球形の原糸体細胞がレンズの役目により微弱な光を集め、それを葉緑体が反射するという仕組みらしい。世界的には、ロシア極東部やヨーロッパ北部、…

駒草

ケシ科の多年草で、本州中部以北の高山帯の砂礫地に生える。名前の由来は、花が馬(駒)の顔に似ているところにある(命名者:牧野富太郎)。「高山植物の女王」と呼ばれる。株は有毒で、アルカロイドのディセントリンやプロトピンなどのモルヒネ様物質を含…

苔桃

ツツジ科の常緑低木で北海道から九州の高山帯に生える。初夏、紅色がかった釣鐘形の花をつける。花言葉は『反抗心』『冷淡』『不実』『不信』『背信』『くじけない』『幼い心』などと豊富。 その実は、生食、塩漬け、果実酒などで食べられる。実にも葉にも薬…

アサギマダラ

羽を拡げると10センチほどになる大形の蝶で日本全土、中国大陸、台湾、ヒマラヤなどの山林に分布。この蝶は、驚異の飛翔距離で有名。日本列島を縦断、南の沖縄や台湾まで延べ2200km以上を飛ぶ。もちろん途中で花の蜜などを吸う休み時間はある。春には…

河津桜と雪の富士

今年も足柄上郡にある松田山に行って来た。松田山は河津桜とハーブ園で知られる。河津桜は満開を迎えていた。心配していたように春の強風でかなり花が散っていた。その河津桜の下の斜面には菜の花が咲いて、桜とのコントラストが美しい。 第19回の「桜まつり…

螢烏賊

軟体動物ホタルイカモドキ科。北海道、近畿北陸以北、オホーツク海の深海に生息する。五月頃の産卵期には海岸近くに来遊する。富山湾に寄せて来る大群の螢烏賊はよく知られている。 たも網をはっと揚ぐれば螢烏賊の燐光青し真闇の宙に 宮 英子 マンションを…

天空のうた(6)

西行の歌は、他の情景歌と比べると心情が濃くにじむ。西行の特徴がよく出ている。末尾は神祇歌。よって三笠の山に榊葉を挿し始めたのは神である。 雲にうつる日影の色もうすくなりぬ花の光の夕ばえの空 藤原為顕『玉葉集』 野も山もひとつにしらむ雪の色にう…

天空のうた(5)

四首目の歌枕「末の松山」については、過去に何度か言及したが、多賀城駅から歩いて10分ほどのところにある。古くは、古今和歌集の東歌「君をおきてあだし心をわがもたばすゑの松山浪もこえなむ」に出て来るが、その後も「後撰和歌集」 「拾遺和歌集」「金…

天空のうた(4)

三首目の意味は、「 行ったり来たりして、ただうわの空で過ごしているのは、私のいる山の風当たりが強いからだよ」となる。我が身を雲に喩え、妻の家を山に、女の気の強さを風の激しさになぞらえている。 小夜ふけて天の門渡る月影にあかずも君をあひ見つる…

天空のうた(3)

一首目については先に詳しく解説した。四首目は少しややこしい。寄物陳思の歌に入っている。中西進の『万葉集』を参考に意訳すると、「夜明けの布雲が遠く空にかかるように、遠くて逢うこともことばを交すこともできないが、仲を絶つというほど隔っているわ…

天空のうた(2)

分り易くするために、それぞれの歌の語注を*の部分に書いておくが、少々煩わしいか。 み空行く雲も使(つかひ)と人は言へど家づと遣(や)らむ たづき知らずも 大伴家持『万葉集』 *たづき: 手段、方法。 み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる 安…

天空のうた(1)

「天」: 「あま」と読み、ひろびろとした大空を意味する。 「あ(開)」と「ま(間)」からなる。「あめ」は音転。 「空」: 語源は「うち」に対する「そと」からきた言葉。 「うちら」に対して「そとら」の言い方があり、 「そとら」から「と」を略して地…

アンスリウム

熱帯アメリカ原産のサトイモ科アンスリウム属の常緑多年草。明治中期に渡来、大紅団扇(おおべにうちわ)の名がつけられた。仏炎苞から花序が突き出る。花は花序に多数つくが、小さくて目立たない。ちなみに花言葉は、「恋にもだえる心」。 ジャスミンのアーチ…

如月の植物園

日本海側では、東北から九州まで例年に見ないほどの雪が降っている。横浜市でも夜のうちに降った雪が自動車の上に積もった情景が見られた。この時期の花と云えば、梅、早咲きの桜が主体になるが、他に何かないかと思って大船フラワーセンターに行ってみた。…

鰰(3)

ハタハタを詠んだ歌は、2015年7月8日、9日にご紹介した。今回は、俳句について集めてみた。傍題に「かみなりうを」。ハタハタから作った魚醤を塩魚汁(しよっつる)という。 はたはたの大粒卵噛むさびしさ 林 翔 鰰のみひらきし目にまた雪来 山上樹実雄 鰰や…

うたがたも言ひつつもあるか

今後掲載する天空(天や空)を詠んだ短歌を集めていたところ、万葉集で作者未詳の次の歌に出逢った(第十二巻:2896)。 うたがたも言ひつつもあるか我れならば地(つち)には 落ちず空に消(け)なまし 作者未詳『万葉集』 正述心緒に属する歌で、三句以下は分る…

貉(むじな)

アナグマの異称でありタヌキの方言とも。食肉目イタチ科で夜行性。鼠や果実などを食べる。長いトンネルを掘って棲み、冬眠もする。その毛は固く筆やブラシに活用される。 メガロポリス山川草木うづめむをぶらぶらとわれ 毛のなきむじな 坂井修一 この歌の上…

探梅―下曽我

天気予報で快晴の日を狙って曽我梅林にでかけた。まさに予報が的中し、青空の下、梅林のかなたに春雪の富士をのぞむことができた。ただはるか遠くの自衛隊富士演習場の砲撃音がとどろくのには、気が滅入った。以下、概略。 JR国府津駅からタクシーで別所梅林…

蜥蜴(続)

2008年10月3日の続きである。NHK-BSのワイルドライフでモロクトカゲがとり上げられた。オーストラリアに棲むトカゲで、1属1種のモノタイプ。そのとげとげの異様な身体は、右の画像のとおりである。全身の棘に小さな溝があり、その溝がすべて口角につながって…

ロボット

ロボットという言葉は、チェコの小説家カレル・チャペックが初めて用いた。チェコ語のrobotaは強制労働を意味するという。 現在のロボット工学の最先端技術が、NHK-BSテレビのモーガン・フリーマン「時空を超えてーロボットはどこまで進化するのかー」に要約…

探梅―横浜三渓園

2月になると神奈川県でも梅の名所は見ごろになる。今年も横浜の三渓園に出かけた。桜の花見と違って、梅の花を見に来る人は老人たちが主体である。梅の場合には、梅林と呼ばれるほどに梅の木が立てこんでいないと派手さが出ない。 南門から入って、内苑、外…

俳句―取合せ論(5/5)

さらに連結語を省略する場合に古典(漢詩、和歌、能・謡、物語など)の知識を前提とすることがある。本歌取りに当る。次に芭蕉の例をいくつかあげる。 杜若われに発句のおもひあり 1.季語=杜若 2.取合せ語=われに発句のおもひ 3.連結語=省略 芭蕉が八橋近…

俳句―取合せ論(4/5)

取合せ句を具体的に解析する方法を考えてみよう。一句の中から 1.季語 2.取合せ語 3.連結語(とりはやし) を見分けることである。例をあげる。 古池や蛙飛こむ水のおと 芭蕉 1.季語=蛙 2.取合せ語=古池 3.連結語=飛こむ水のおと 柿くへば鐘が鳴るなり法…

俳句―取合せ論(3/5)

取合せ(配合)の手法に対して「一物仕立て」と呼ばれる手法がある。他の事物と取り合わせずに、対象となる季語だけに意識を集中させ、その状態や動作を詠む方法である。これを芭蕉は「発句は只金を打のべたる様に作すべし」と表現した。 以下に「一物仕立て…

俳句―取合せ論(2/5)

「俳句の作り方 〜初心者入門と定型・切れ字・季語〜 」 http://haiku-nyuumon.com/article/195061307.html を借りて「取合せ」を詳しく解説しよう。 一句の中で、二つの事物(主に、季語と別のモノ・コト)を取合わせることで、両者に相乗効果を発揮させて…

俳句―取合せ論(1/5)

自然讃美や人情の機微を詠うことは古典和歌の範囲であった。しかし諧謔や笑い、驚き・意外性を表現する場合には、社会規範なり美意識なりの制約から、俳諧歌・俳諧連歌・狂歌 などの分野を設定する成り行きになった。 俳諧から発生した俳句において、自然讃…

はこべ

ナデシコ科ハコベ属の総称。漢字では繁縷と難しい表記になる。「はこべら」、「あさしらげ」とも言い、春の七草の一つ。七草粥で食べるのが一般的か。炒め物にしても旨いらしい。整胃・整腸作用、母乳の分泌の促進、歯痛 などの薬効があるという。 ななくさ…