天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

雉子(2)

キジ科の鳥で日本特産であり、日本の国鳥。狩猟の対象になり肉は美味という。古名には、キギシの他に、野鳥(のつとり)、さぬつ鳥などがある。この二語は、雉子にかかる枕詞にも使われた。なお「焼野のきぎす」は、子を思う親の情愛に譬えられた。万葉集では…

雉子(1)

わが住む東俣野には農地や林が広がっている。といっても牛馬を飼っている農家はない。トラクターを使用しているのである。そんな田野に春の草花や昆虫、鳥などを探して歩くことがある。ある日のこと芹や蓬の写真を撮りたいと田圃の畦を伝って歩いていたら、…

箱根湯本

今年は箱根入生田長興山紹太寺のしだれ桜を見る機会がなかった。例年必ず見に行くのに、まことに残念。その心残りのせいではないが、久しぶりに箱根湯本を歩いて見た。湯本駅側から早雲公園の山に登って早雲寺に入り、白山神社に寄り、早川縁を歩いて湯本駅…

りんごの花

林檎はバラ科の落葉木。欧州東部からアジア中部の原産。花は白色または帯紅白色の五弁。観賞用樹木や盆栽として植えられる実の小さな姫林檎もある。右上の画像は、その姫林檎の花である。 林檎さくところを行けり紅に白まじはりて日に照らふ花 佐藤佐太郎 ふ…

蓬(よもぎ)(2)

蓬の生い茂った処が蓬生(よもぎふ)で、その荒れた家をよもぎの宿とか門(かど)という。蓬の仲間に、カワラヨモギ他がある。一茶の草餅の句を次にあげておく。前書に「月をめで花にかなしむは雲の上人のことにして」とあり、 おらが世やそこらの草も餅になる …

蓬(よもぎ)(1)

キク科の多年草。芳香があり葉は菊の葉に似る。モグサは葉裏の綿毛で作る。秋に、黄褐色の小さい頭状花をつける。若葉を摘んで草餅にする。蓬の古名に、さしも草、させも がある。万葉集には長歌一首に詠まれている。 秋過ぎて庭の蓬の末見れば月も昔になる…

鷽(うそ)(2)

大宰府や亀戸の天満宮には、ウソ祭という神事がある。嘘を鷽にかけて、木製の鷽を参詣人が取り換えあって、一年の鷽を流すという。俳句では春の季語。なお、体色から雄を「照鷽」、雌を「雨鷽」とも呼ぶ。まことに奥床しい。 てり雨や滝をめぐれば鷽の啼く …

満天星(どうだん)の花

どうだん躑躅は、ツツジ科の落葉低木で四国には自生するが、普通は庭木や生垣にして観賞する。四月になると新葉とともに白色壺形の小花を下向きにつける。秋になると紅葉が見事。植物名はドウダンツツジ。なお更紗どうだんは本州と北海道の山地に生え、花は…

鷽(うそ)(1)

アトリ科の鳥。本州中部以北の亜高山帯の針葉樹林に繁殖する。秋から冬にかけて低地へ移り、桜の花芽を好む。口笛に似た鳴き声。囀るときの姿が琴を弾くての動きに見えるところから、琴弾鳥の別名がある。雄は美しく愛らしいが、現在、狩猟は禁じられている…

春潮(4)

俳句に詠まれた例をあげる。松本たかしの句は、春潮の情況をよく表現している。阿波野青畝の句は、春潮ゆえのロマンであろう。松瀬青々の句は、気宇壮大で惹かれる。作者の立ち位置が気になる、船乗りが詠んだようにも思える といったことは穿鑿無用なのだ。…

風薫る源氏山

浄智寺の裏山から入って風薫る葛原岡や源氏山を巡って壽福寺に降りてきた。咲き残る桜、満開の八重桜、楠や檪の若葉などが入り混じった山林の色彩と息吹は素晴らしい。 山道の日差をさけて諸葛菜 青眼の人と出会へり著莪の花 さくら散る俊基卿の斬首跡 新し…

山葵(わさび)の花

冷たく涼しい気候と日蔭を好み、谷川の浅瀬に生育し、流水の山葵田で栽培される。四月頃総状花序をなす小さな白色花をつける。花、葉、茎、根すべてが食べられる。日本料理には欠かせない。 夜の膳の山葵の花をすこし噛み 能村登四郎 行く水に影もとどめぬ花…

花筏(はないかだ)

江戸前期の歳時記では、川を下ってゆく筏に散りかかる花びらのことと出ているが、現在では、水面に落ちた花びらが寄り集まって流れゆく様子を筏に見立てたもの。 なお、ミズキ科の落葉低木に花筏と呼ぶものがあるので、注意を要する。 ゆるやかに橋潜りをり…

花の宮ケ瀬

短歌人・東京歌会に次の詠草を出した。 葉桜になりつつあればそはそはと桜狩ゆく まだ見ぬ山へ 配布されたプリントの終りの方に載っていたので、みんな疲れていたか、さしたる批判は出なかった。ただ花鳥佰さんが結句「まだ見ぬ山へ」に惹かれると褒めてくだ…

ムスカリ

地中海沿岸から西アジアに分布するユリ科の球根植物。一つ一つの花は瑠璃色の壺形で下を向いて開く。秋植えで春に開花。白い花もある。 母若く在りし日のごと紫のムスカリの花雨に咲きたり 高安国世 去年の秋鉢ごと行方晦まししムスカリ咲けり石の後ろに 小…

春の植物園

近所の桜は散って葉桜になりつつあり、淋しくなったので春の草花を見るべく大船フラワーセンターに出かけた。ここには桜の品種も多いので、満開になったばかりの桜があるし、利休梅、石楠花、躑躅、箒桃、チューリップ、ムスカリなど多様な色を楽しむことが…

椋鳥(むくどり)

このブログで何度かとりあげたスズメ目ムクドリ科の鳥である。東アジア(中国、モンゴル、ロシア東南部、朝鮮半島、日本)に分布する。日本国内ではほぼ全域に分布する留鳥。雑食性で、植物の種子や果物、虫の幼虫などを好んで食べる。 最近、工場の壁穴にあ…

花ちる衣笠山

横須賀市にある衣笠山も神奈川県下の桜の名所である。ここに行く時はいつも裏側の竹林を通る公園入口から入る。昆虫の森、桜の森、展望台と登って、上の広場、管理事務所へと抜けるルートである。今回は満開の時期をのがしてしまったが、おおかた散って淡い…

躑躅と花桃の山

相模原市城山のかたくりの里を今年も訪ねた。ただ今回は、ニホンカタクリの花の時期を少し過ぎていて見栄えがしなかった。その替りキバナカタクリが花盛りになっていた。また箒桃や躑躅の花が林立して華麗であった。 花桃のピンク鮮し始業式 咲き満てり山に…

山桜を恋う(2)

人で混み合う花の名所は苦手である。あまり知られていない山中の山桜を静かに愛でることを好む。西行の心境というべきか。天気が良くなりそうなので、東逗子の神武寺に行ってみた。ここの山桜が気に入っており、今迄にも何度かこのブログでとり上げている。…

たらの芽

たらの木は山野にはえるウコギ科の落葉低木で、高さは4mくらい。木の先端に出る若芽がたらの芽である。山菜の王として珍重され、天麩羅や和え物などにして食べる。 たらの芽や落石岨を塞ぎをり 中村四峰 客あればたらの芽かきに妻走る 堤俳一佳 多羅の芽を…

一人静

丘陵の林にはえるセンリョウ科の多年草。茎頂に鋸歯のある四枚の葉を出し、早春に葉の間に花軸をつけ白い細かい花を穂状に一本に咲かせる。北海道、本州、四国、九州に分布。 名前の由来は花の可憐さを静御前になぞらえたもの。花穂を2本以上出す近縁種のフ…

水芭蕉

サトイモ科の多年草。近畿以北の山間部の沼沢地に自生する。特に尾瀬湿原に群生する水芭蕉はよく知られている。真白な帆のように見えるのはサトイモ科特有の仏炎苞と呼ばれる部分で、それに包まれて10センチほどの棒状のものが花穂である。 花と影ひとつに霧…

山桜を恋ふ(1)

どうも今年は天候不順で桜狩が思うようにならない。あっという間に満開になり散ってしまう。山桜は早や葉桜になりかけている。ソメイヨシノの華麗さも良いが、日本古来の野趣と気品のある山桜も見ずにはおられない。それで遅ればせながらわが住む横浜市東俣…

春潮(3)

春のゆったりした気分に潮の音は快い。ただ早春の潮は荒々しい面が残る。特に春一番、春の嵐の頃は勇壮な光景が見られる。 夕鳥の翔(と)び立ちゆきし多々良浜ゆたにたゆたに寄する 春潮(はるしほ) 山埜井喜美枝 髪梳(す)けるちからこもりてひたぶるに春の潮(…

花の小田原&鶴ケ丘

浜松から帰りの小田原駅で桜が満開に近いことを知った。翌日あらためて小田原に出かけて、城の周辺と西海子小路の桜を見た。小田原には他に桜の名所として長興山と一夜城跡があるが、同じ日に行くにはちときつい。それで小田原の後は鎌倉鶴ケ丘八幡宮に行っ…

花の浜松

今年も花見の時期に浜松に行ってみた。去年は浜松城の桜を見た。他の都市と違って市内にはあまり桜を見かけない。だから桜の名所を予め調べておく必要がある。今回は浜松市浜北区の御陣屋川の桜堤。大仰な名前がついているが、二級河川である。その堰堤に百…

春潮(2)

江ノ島の裏側の海岸は、春潮の見所である。風の弱い平穏な日には、岩場に釣り人が多く出るが、風の強い日には波が逆巻き、海面は白く泡立って海鳴がとどろく。その海面に鴎が群れて浮かんでいる。羽色が茶褐色の幼鳥も混じっている。綺麗な声に振り向けば、…

春潮(はるしお)(1)

春の海水。春になると潮の色がしだいに淡い藍色になり、明るくあたたかく感じられるようになる。干満の差も激しくなる。春の潮(潮は「しお」あるいは「うしお」)、春潮(しゅんちょう) などとも言う。 悲しみてひとり来たれる現身を春の潮のおとは消たむか …

土佐水木(とさみずき)

四国の山地に自生するマンサク科の落葉低木。庭木にして観賞する。秋になると実が褐色に熟して二つに割れ、中から細長い種子が現れる。 裏日本の縁(へり)に沿ひて北上せる土佐水木とふ つつましき花 河野裕子 きぶし咲きとさみずき咲き繰り返す年々の春いま…