天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

新緑

初夏の森林浴をせんと大磯湘南平の端の高麗山に登った。大磯駅から旧東海道を歩いて高来(たかく)神社に行き、地獄沢を廻って山頂をよぎり楊谷寺横穴群の谷に降りて、大磯駅に戻った。晴天、しかも連休中ながらこのあたりを歩く人は少ないので気持が安らぐ…

岬と丘と

日本全国に「恋人岬」や「恋人の丘」はどれくらいあるのだろう。 「恋人岬」と言えば、結婚を反対された二人が海に身を投げたという悲恋にちなむグァム島の観光名所。新潟県柏崎市にある恋人岬にも悲恋の伝説がある。ここは佐渡弥彦米山国定公園のなかでも、…

飯田龍太の位置づけ

角川「俳句」五月号は、二月二十五日に八十六歳で亡くなった飯田龍太の追悼大特集を組んでいる。評論ではなく大方が思い出話なので、特筆するような文章はない。ただ、びっくりしたのは、長谷川櫂が「古今名句十句選」を出していること。次の十句である。 古…

漢字を詠み込む(続)

高野公彦の『甘雨』を読み終えたが、前回の続きで歌集の終りまでで、魅力的な漢字を入れた歌を以下にあげておく。 闘ひを踊りに変へし花四天(はなよてん)華やかにして さみしき日本 *花四天とは、歌舞伎で、時代物や所作事のはなやかな 場面に登場する捕…

短歌人・4月東京歌会

先の日曜日に上野で開催された歌会。例によって小池光のコメントをいくつかあげる。もちろん、皆が小池のコメントに賛成したわけではないが、小池に師事し選を受ける身としては、彼のコメントを絶対ととらえて遵守したい。 一つ断り二つ断られしきょうのわれ…

漢字を詠み込む

やまと歌である短歌に漢字を使うことは、歌の表情が硬くなる、ぎこちなくなるので、できるだけ避けるという暗黙の作法がある。ただ、安永蕗子のように、実に上手に漢字を使う歌人もいる。高野公彦もその一人であることがわかった。 高野公彦の第十一歌集『甘…

短歌とルビ

広辞苑によると「ルビ」とは、振り仮名用活字。また、振り仮名。5号活字の振り仮名である7号活字がルビー②とほぼ同大であるからという。イギリスの古活字の大きさの一つで、約5.5ポイント。要するに、漢字のふりがな、ふりがな用の活字 のことである。…

臨終句会

「臨終句会」などあるわけない。わが造語である。でも、自分が死かけているのに集まった弟子たちに発句を作らせて選をした芭蕉の凄まじさには、この言葉を当てるしかない。 大坂で反目してしつこく芭蕉に來坂を要請してくるふたりの弟子、之道と洒堂を放って…

躑躅

なんとも画数の多い漢字である。分類は難しいらしいが、世界に850種、日本には50種程度が自生しているという。でもどうしてこの字を当てるのか? 群馬県立つつじが岡公園のガイドによると、中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみして…

歌の作法

小島ゆかり著『高野公彦の歌』(雁書館)を読み終えた。高野公彦の履歴や嗜好、歌の作法などが垣間見えて大変面白かった。本名は日賀志康彦。高野公彦は、師の宮柊二がつけてくれた筆名。朝食にもうどんを食べるほどのうどん好き。酒は言わずもがな。 高野公…

芭蕉の実像?!

俳句や短歌の月刊雑誌を買うついでに、文芸コーナを見回していたら、嵐山光三郎著『悪党芭蕉』という強烈な表題の本が目に付いた。読売文学賞と泉鏡花文学賞をもらっている。衝動的に買ってしまった。通勤電車の中で読み始めたが、めっぽう面白い。論理明快…

水木

街路樹の水木に花が咲き始めた。この名の由来は、早春、芽をふく時、地中から多量の水を吸い上げるところにある。花水木というときは、北米原産のドッグウッドをさし、別名アメリカヤマボウシとも。明治の末に東京市長であった尾崎行雄が、米国に日本の桜の…

藤の花

鎌倉では、もう藤の花が咲き始めた。マメ科の蔓性落葉木。山野に自生するヤマフジと観賞用の園芸品種がある。ヤマフジは花房が短い。蝶形の花を長く総状にたくさんつけるのは野田藤。この名は、豊臣秀吉が大阪府野田の藤を愛でたことに由来するという。藤の…

八重桜

重弁の花が咲くサトザクラの総称。ボタンザクラとも言い、他の桜に遅れて開花する。関東では、今の時期が見頃である。濃艶だが、少し暑苦しい。 風に落つ楊貴妃桜房のまま 杉田久女 八重桜製菓工場に咲けば菓子 山口誓子 九重に久しくにほへ八重桜のどけき春…

旧川喜多邸

四月十五日は、鎌倉まつり最後の日であり、恒例の流鏑馬が開催される。今回も見たかったが、あまりにギャラリーが多く立錐の余地もない。二時間も前から我慢強く待っている。何度も見ているのであきらめた。八幡宮を出て雪ノ下二丁目を歩いていたら、たまた…

伝元使塚

四月十四日開催される大相撲藤沢場所に先立って、大関・白鵬らモンゴル出身力士十一人が、片瀬にある龍口山・常立寺を訪問し、元使五人塚に参拝したという新聞記事を読んだ。 鎌倉時代・北条執権の時、文永の役(1274)に失敗したフビライは、翌年、わが…

蒲公英

キク科の多年草。エゾタンポポ、カントウタンポポ、カンサイタンポポ、セイヨウタンポポ など二十種ほどもあるらしい。鼓草(つづみぐさ)というゆかしい呼び名もあるが、タンポポという名前の由来は、「たんぽ穂」つまり、花が枯れて絮の状態が、綿を丸めて…

山吹の花(続)

調べてみたら、万葉集に山吹の花の短歌は十六首ある。長歌は一首。以下に短歌を。 山振の立ちよそ儀ひたる山清水酌みに行かめど道の知らなく かはづ蝦鳴くかんなみがは甘奈備川に影見えて今か咲くらむ 山吹の花 山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に…

連翹の花

咲く時期が重なるので、一見、山吹の花と紛らわしい。中国原産のモクセイ科の落葉低木。江戸時代に渡来したという。午後から雨になるという予報を気にしつつ登った湘南二宮町吾妻山の丘陵には、まとまって咲く連翹の花がまぶしかった。 鶯の声山頂に登り来る…

もっと破調の歌を

「短歌人」四月号の特集「破調の歌」を読み終えた。大変有意義な評論集になっている。わけても「かりん」所属・川野里子が寄稿した「葛原妙子の破調」がよくまとまっている。副題が、「第三句欠落の意味」となっているが、葛原妙子の破調の歌全体について、…

チユーリップ

ユリ科の多年草。アナトリア高原とサマルカンドの間、小アジアが原産地という。トルコで栽培されていたものが、16世紀にヨーロッパに渡りオランダを中心に品種改良が行われた。日本には文久年間に入ってきたが、栽培が盛んになったのは、明治以降。早咲き…

山吹の花

「七重八重花は咲けども山吹の・・・」という太田道灌と農家の女の山吹にまつわる和歌の話(『常山紀談』)があまりにも有名。日本原産で各地山野渓谷に自生するバラ科の落葉低木。よってふるくから歌に詠まれている。 桜の花が散る頃から咲き始める。風に揺…

西海子小路

「さいかちこうじ」と読む。小田原の桜の名所といえば、先ずここを挙げたい。もちろん、小田原城園内の桜も濠のめぐりの桜も見ごたえがあるが、昔の武家屋敷に沿って長々伸びる道に、両側からかぶさるように咲く桜の並木は、もの思わせるロマンがある。 イン…

根岸森林公園

短歌人・横浜歌会の折に、川井怜子さんから桜の見所として、根岸森林公園のことを聞いたので、さっそく行ってみた。JR根岸線・根岸駅で下車、根岸台まで登っていく。崖が崩れているような脇道を歩いた。 この公園、もともとは慶応三年(1867)にわが国…

三ツ池公園

これは神奈川県立公園である。NHKの桜情報で満開となっていたので訪ねてみた。鶴見からバスに乗って15分ほど行き、さらに徒歩で15分ほど歩く。公園の中心には、文字通り上池、中池、下池の三つが並んでいる。随分古くから知られていたようで、下池の…

破調と秀歌

角川「短歌」四月号の大特集「秀歌の条件」では、文語か口語か、テーマ・主題を決める、素材・題材への取り組み、写実ということを理解するために、助動詞の基本、助詞の基本、動詞の基本、定型の美しさ、破調の使い方、比喩の使い方、推敲について、我が秀…

海棠の花

先の日曜日の横浜歌会で、海棠の花が話題になった。思えばまさに今が海棠にとっても花の季節である。桜に人気をとられてニュースになることは稀だが、鎌倉には海棠で有名な寺がいくつかある。さっそく妙本寺と光則寺を訪ねてみた。 「鎌倉比企ケ谷妙本寺境内…

桜と俳句

この時期の俳句や短歌の雑誌では、さくらをどう詠めばよいか、桜と作品の思い出といった特集が見受けられる。「藍生」四月号には特集「桜」として、いくつものエッセイが載っているが、中で岩田由美が書いていることが平凡ながら参考になる。 * 単純な言葉…

花曇

千鳥ヶ淵や九段周辺は、今桜の満開である。靖国神社参道両側には、屋台がずらりと並び、昼はOLの昼食を夜は会社帰りの宴会の食事を提供している。屋台の客は、バスでやってくる観光客よりも学生や会社員の方が多いように見える。 四月になったので靖国神社…

花狂い(続)

鎌倉はどこも花見客で込み合っていた。というとあらゆるところを見てきたのか、と問われそうだが、今日歩いたのは、寿福寺から入って裏山経由源氏山公園を横切り、葛原岡神社から浄智寺へ抜けるルートである。山桜はおおかた散っていたが、ソメイヨシノはま…