天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

蓮の実

未熟なものは柔らかく甘味があり、生で食べられる。また乾燥して菓子の材料にする。 蓮の実のあをあを八雲旧居かな 篠永妙子 蓮の実の飛びし音など母の家 佐伯尚子 鑑真の寺の蓮の実飛びにけり 塩谷 孝 枯れのこる浮葉の上に蓮の実の飛ぶ音寒し冬や来ぬらむ …

へちま

漢字で糸瓜と書く。熱帯アジア原産のウリ科の一年生つる草。つるから採るヘチマ水は化粧水になる。果肉をとって乾かした繊維は洗浄用具に使われる。昔、使ったことがあるが、肌に気持よい。実に清々しくなる。 糸瓜の俳句といえば、次の正岡子規の絶筆三句に…

九月折々(2)

仲秋の名月の時期に愛知県岡崎市を訪ねた。徳川家康生誕地である岡崎城や八丁味噌で知られる。岡崎城公園には、徳川家康の像が三か所にある。武装の像、しかみ像そして時計塔のカラクリ人形(右の写真)である。時計塔は三十分ごとに三面が上り能舞台が現れ…

蝉の死

地中で過ごす幼虫の期間は、7年あるいは種類によっては17年と長期間だが、地上に現れてからの成虫の寿命は、10日程度と短い。かしましく鳴いて生殖行動を終えたら、地面に落ちて蟻の餌になってしまう。死にきれず蟻にたかられて声を出している様は無惨…

みんみん蝉

セミ科の昆虫。日本の特産種で北海道南部から九州にかけて見られる。寒冷地に多いという。幼虫は約7年間を地中で過ごす。 あかつきにみんみん蝉の競ふこゑ今日は今日する 仕事をぞ思ふ 土屋文明 草よ木よ人も従へ黙れよとみんみんいよいよ力 入れて啼けり …

薊(あざみ)

キク科の多年草。多くは秋に開花するが、野薊は春から夏に開花し、鬼薊は初夏から秋に開花。俳句では春の季語になっている。 薊濃し磐余(いはれ)の道と聞きしより 八木林之助 くらき夜の大寺を吾が出でくれば薊の花に稲妻のしつ 川田 順 ここを過ぎれば人…

九月折々(1)

台風十二号は紀伊半島に甚大な被害をもたらした。さらに十五号が来て本州を縦断し、わが国にとっては東日本大震災と合せてダブルパンチになった。NHKは四六時中このニュースを流していた。十二号の際の行政の対応は緩慢であった。地震津波よりはるかに正…

流鏑馬

やぶさめは、疾走する馬上から的に鏑矢(かぶらや)を射る、日本の伝統的な騎射の技術・稽古・儀式を意味する。馬上における実戦的弓術の一つとして平安時代から存在した。 犬追物、笠懸とともに騎射三物と呼ばれた。記録ではもっぱら神事の奉納武技とされて…

グラジオラス

アフリカ、地中海沿岸地方原産のアヤメ科の球根植物。わが国には明治時代に、欧米から交配種が輸入された。秋植えの早咲きと春植えの夏咲きがある。花の色は多い。夏の季語だが、傍題に唐菖蒲、和蘭(オランダ)あやめ がある。渡来当時の命名の名残であろう。…

萱草(かんぞう)

ワスレグサ科(ユリ科)ワスレグサ属の多年草。日中に開花し、一日で終わる。忘れ草、甘草 などとも。身につけて憂いを忘れ、若葉をたべて悩みを忘れるという。 萱草に立つ浪音や桂浜 高木晴子 萱草の夕花明り熊野川 森 澄雄 萱草や林はづれに牧師館 友岡子…

向日葵(ひまわり)

キク科の一年草。北アメリカ原産。観賞用と油料用がある。種子はナッツとして食用にされる。日輪草、ひぐるま などとも呼ばれる。 熟れてきて向日葵の花凹むかな 長谷川櫂 向日葵に種ぎつしりと水明り 長谷川櫂 向日葵の種ばらばらと外しけり 長谷川櫂 一粒…

ムクロジの実

ムクロジは漢字で無患子あるいはまれに木欒樹と書く。関東以西の山地に生え、神社や寺の境内にも植えられる。深大寺の無患子は有名。落葉高木で樹皮は白く滑らか。球形の実は十月になると飴色に熟す。黒い種子は追い羽根の玉に使われる。 深大寺無患子拾ふ十…

生命の星・地球博物館

この立派な施設は小田原市入生田にある。沿革の説明によると、平成7年(1995年)3月、横浜馬車道の神奈川県立博物館(現:神奈川県立歴史博物館)の自然史部門が独立する形で誕生した。展示のほか、自然に関する調査・研究、資料の収集・保管、これらを生か…

ひぐらし

漢字では、蜩、茅蜩、晩蝉 などを当てる。セミ科の昆虫。翅は透明で、緑と黒の斑紋がある。その鳴き声から「かなかな」とも呼ぶ。「ひぐらし」と「つくつく法師」は、見ただけでは区別がつけにくい。鳴き声を聞けばすぐにわかるのだが。 万葉集には9首が詠…

馬入川

広い地域を貫いて流れる川は、場所によって呼び名が違う。山中湖を水源とし太平洋にそそぐ相模川についていえば、上流では桂川、河口近くでは馬入川と呼ばれた。 建久9年(1198年)、稲毛三郎重成が河口付近に橋を架けたが、その開通式に参加した源頼朝…

熱帯アジア原産のイネ科の一年草。わが国の稲作は縄文時代後期に始まったとされる。世界的には紀元前数千年には、すでにインド、中国等で栽培されていたという。 奥津城も稲の香ぞするふるさとは 石塚友二 住吉(すみのえ)の岸を田に墾(は)り蒔きし稲のさて刈…

初秋の真鶴岬

真鶴岬は、神奈川県南西部の相模湾に突出する岬である。箱根火山の溶岩流で形成された。岬のかたちが鶴の羽を広げたように見えるところから真鶴岬の名がつけられたという。今までに何度も訪ねて歩き廻ったが、その間に随分変化した。特に店舗の消長が著しい…

あぶら蝉

半翅目セミ科の昆虫の1種。名称の元は、その鳴き声が油を炒るような音に似ているところにある。幼虫は地中で6年間過ごし、7年目に地上に出て来る。 あぶら蝉しきなく庭の青芝に散りこぼれたる白萩のはな 長塚 節 油蝉いま鳴きにけり大かぜのなごりの著る…

空蝉

「うつせみ」に当てる漢字には、空蝉、虚蝉、現身、現身人などがあり、意味としては、現世、この世、現世の人、せみのぬけがら など。 うつせみは数なき身なり山川の清(さや)けき見つつ 道を尋ねな 万葉集・大伴家持 空蝉の羽におく露の木がくれてしのびし…

蝉の穴

蝉の卵は枯枝や果実に産みつけられ、年内あるいは翌春に孵化して地上に落下、そこから地中に入って長年月を幼虫として過ごす。山道に開いている蝉の穴を数え始めるとキリがなくなる。随分多い。日本に棲息する蝉は30種以上らしいが、穴にもそれらの特徴が…

苦瓜(にがうり)

正式名称は茘枝(れいし)。熱帯アジア原産ウリ科のつる性一年草。苦みがあるが漬物などの食用になる。成熟すると黄赤色になり、果皮が裂けて紅色の果肉を現わす。但し、食用になるのは若いもの。 親指のはらに種ぬく苦瓜のたのしからずや厨籠りは 阿木津 英 …

朴の葉

朴の木はモクレン科の落葉高木。厚朴(ほほがしは)とも。初夏に芳香のある九弁花を開く。果実は赤い。大形の葉は物を包むのに用いられる。飛騨高山の朴葉味噌はよく知られている。かつて当地のホテルに宿泊した朝、朴葉味噌を炭火焼にして食べた味がなつかし…

瓢箪

ウリ科のつる性一年草、ユウガオの一変種。雌雄同株。果実は中間がくびれ、成熟すると果皮は毛が落ちて硬くなる。水に十日ほどつけてから果肉を取り去り、乾燥させて酒器などに用いる。漢字の「瓢」は「ひさご」を、「箪」は竹製の丸い飯櫃を、意味している…

蓮の花

熱帯アジア原産のスイレン科の多年生水性植物。種子は泥炭層にあれば、千年以上も発芽力を失わない。実が飛び葉が枯れる秋の末には、地下茎の先端には、食用になる蓮根が出来る。 大きな葉が枯れて茎が折れた敗残の様を「敗荷(やれはす)」という。仏教では、…

清水

清水は湧き出る場所により、山清水、岩清水、野中の清水などある。井戸と組み合わせて「岩井の清水」と言えば、井戸として囲った岩間の清水であり、「板井の清水」は、板で囲った井戸の清水のことである。 春雨の木下につたふ清水かな 芭蕉 山吹の立ちよそひ…

烏賊(いか)

軟体動物頭足類の総称で日本近海には90種程度が生息する。 スルメイカ: 赤褐色で背中に濃い色の線帯がある。 コウイカ: 背に舟形の甲がある。マイカ、スミイカとも。 モンゴウイカ: 背に眼状紋が多数ある。雷烏賊とも。 ヤリイカ: 胴が長く非常に細い…

花火(2)

家族で子供たちと遊ぶ規模の花火のうたをあげる。 手花火を命継ぐ如燃やすなり 石田波郷 花火屑おしろい花に掃き寄せて 細見綾子 昔せし童遊びをなつかしみこより花火に余念なし われ 正岡子規 平凡に堪へがたき性の童幼ども花火に飽きてみな 去りにけり 斎…

花火(1)

専門業者が担当する打上花火(揚花火)や仕掛花火と家庭でもできる線香花火(こより花火)や鼠花火などの手花火と二種類がある。遠花火という言葉もあるが、これは空に揚がった花火を遠く離れて見る場合である。歴史はかなり古く、中国では宋代(960年―1…

鑑賞の文学 ―詩 篇(4)―

小池 光『うたの動物記』を読み終えた。外出に持ち歩き電車内で読むというペースなので、時間がかかった。でも一項目即ち一動物について2ページ分の文章なので読みやすい。特長はつぎの二点にある。 □ 動物を詠んだ短歌、俳句、詩をとりあげる。驚くほど幅…

素麺(そうめん)

小麦粉を食塩水でこね、ごま油や菜種油をつけて引き延ばし天日で乾かして作ったもの。奈良県桜井市三輪や香川県小豆島が有名な産地である。俳句の季語としては「冷索麺」、傍題に「索麺冷す」 がある。 うまうまと独り暮しや冷索麺 山田みづえ 火の国のわけ…