天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

湘南の西行歌碑(3)

三番目は辻堂の熊の森にある歌碑について。学生寮というマンションの裏庭にあり、まことに見つけにくい。このあたりは昔、畠山重忠の友人の熊谷次郎直実の領地で一面の森林であつたため、熊谷家の一字をとって熊の森とよばれるようになったらしい。畠山重忠…

ハイビスカス

アオイ科の常緑低木。沖縄では仏桑花、琉球むくげ という。花の色には、黄、白、赤、桃、紫紅、橙 など様々ある。原産地は不明、雑種起源の説あり。「ハワイアン・ハイビスカス」と総称される膨大な園芸品種群がある。歳時記では、仏桑花が季語、ハイビスカ…

百合

ユリ科ユリ属の総称。北半球の温帯を中心に100種ほど生育する。うち日本には15種が自生する。次の4種類に大別される。 テッポウユリ類: テッポウユリ、ササユリなど ヤマユリ類: ヤマユリなど スカシユリ類: スカシユリ、ヒメユリなど カノコユリ類…

露草

ツユクサ科の一年草。東アジアの平地に分布する。ボウシバナとも。花は一日でしぼむというが、ずっと見つめていたことがないので、未確認。栽培変種のオオボウシバナの青色の花汁は、友禅染の下絵を描くのに用いられる。「月草」「蛍草」などの別名あり。万…

湘南の西行歌碑(2)

二番目は茅ヶ崎の歌碑。1960年代まで国道134号線のバスロータリーにあったものが、道路改修の際に折れたので、茅ヶ崎文化資料館の門柱として残された。次の歌が彫られている。 芝まとふ葛のしげみに妻こめて 砥上ヶ原に牡鹿鳴くなり ちなみに茅ヶ崎文…

鑑賞の文学 ―短歌篇(29)―

先日のブログ「犬の歌」のところで、老犬の介護日記についてご紹介したが、その後で紺野裕子さん(「短歌人」所属)の第二歌集『硝子のむかう』(六花書林、2500円)が刊行された。さっそく読んでいくと、老いたご両親の介護と飼い犬の看取りの歌が載ってい…

ヨシキリ

日本には大葭切(翼長8.5cm)と小葭切(翼長5、.5cm)の2種類が夏鳥として渡来する。前者を通常「ヨシキリ」と呼んでいる。水辺の葦原でギョギョシギョギョシと鳴くところから、「行々子」の名もある。葦の茎を組み合わせて椀形の巣を作る。カッコウに…

待宵草

アカバナ科の多年草。南米原産の帰化植物で、嘉永年間に渡来した。近縁のオオマツヨイグサは明治初期に帰化したが、原産地は不明らしい。その他に北米原産のメマツヨイグサ、コマツヨイグサなども帰化している。一般にマツヨイグサの類をツキミソウと呼んだ…

湘南の西行歌碑(1)

神奈川県湘南で西行ゆかりの地といえば、第一に大磯の鴫立庵である。この付近で西行が新古今集三夕の内の一首 心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮を詠んだ、との言伝えが古く足利時代からあったらしい。ここに最初に庵を結んだのは小田原の人…

梅雨明け

関東地方はもう梅雨が明けたという。暦の上では、入梅(6月11日頃)から30日で梅雨が明けるとされるので、7月11日を過ぎれば、なるほどそんなものかと納得。 富士かけて梅雨明け雲の深さかな 大場白水郎 梅雨明けの裏富士のこの男貌 雨宮きぬよ 大男…

犬の歌

西洋では石器時代、東洋では縄文弥生時代に、犬の存在が知られるという。飼犬は日本書記に見え、平安時代の放し飼い、鎌倉時代の犬追物、闘犬の流行などが文献に出ている。万葉集には三首(長歌2、旋頭歌1:以下に紹介)詠まれている。世界で犬の種類は、…

泰山木の花

北米原産、モクレン科の常緑高木で、日本には明治初年に渡来した。5月から6月にかけて香気ある白い花を開く。9月から10月には、果実が裂けて赤い種子を出す。右の画像は、先日、西行法師終焉の地である河内の弘川寺を訪れた時見つけたものだが、藤沢市…

梅雨雑詠(5)

鎌倉市大船5丁目8−29にある常楽寺を訪ねた。もと粟船御堂(あわふねみどう)と呼ばれ、北条泰時夫人の母の追善供養のために建てたられ、創建当時は密教系寺院だった。建長年間、時の執権北条時頼によって宋の禅僧、蘭渓道隆が鎌倉に招かれ際に、蘭渓ははじ…

早苗田

田植えを終えて間もない田を植田という。早苗田は季語「植田」の傍題になる。苗を植えて一か月もすると青田に変る。 懐しき榛の入日の植田かな 松崎 豊 かささぎに植田明りの果もなし 米田静二 これぞ加賀百万石の青田かな 渋沢渋亭 みちのくの青田や昼の月…

柘榴の花

ザクロはインド北西部からイランにかけての地方が原産地。わが国には平安時代以前に渡来したという。当初は観賞用に栽培されたが、江戸時代からはその実が食用になったらしい。俳句では夏の季語で、傍題に「花石榴」があるが、これは園芸品種で結実しない。 …

七夕

女子が手芸に巧みになることを祈る中国の祭事「乞巧奠」が、日本に伝わり、奈良時代から宮中で始められた。これにわが国固有の棚機女(たなばたつめ)の信仰が結びついて七夕祭あるいは星祭と呼ばれるようになった。なお奠とは物を供えて祀る意。牽牛、織女は…

半夏生

気候では、72候の内のひとつで夏至から十一日目の7月2日頃にあたる。植物では、薬草の一種。葉の半分が白いことから、化粧が半分(半化粧)という意味もある。 汲まぬ井を娘のぞくな半夏生 言水 水がめに虫の湧きたり半夏生 上村占魚 半夏生採血手ぎはよ…

梅雨雑詠(4)

神奈川県足柄上郡開成町のあじさい祭が終わった後に訪ねてみた。いつものことだが、小田急・開成駅で下車し、酒匂川沿いに歩いた。葭切(行々子とも)が啼いていた。今年初めて声を聞いた。はるかな懐かしさを感じる。 対岸に行々子啼く酒匂川 葭切のこゑな…

クレマチス

世界の温帯に広く分布するキンポウゲ科のつる性植物。200種類以上あるという。日本に自生するカザグルマや中国産のテッセンなどの原種と交雑によって作り出された多数の園芸品種を合せた総称。繁殖は挿し木、継ぎ木による。日本では、鉄線(花)としても…

ある日の歌会

「短歌人」七月東京歌会が、去る7月八日午後、池袋にある豊島区生活産業プラザで開催された。ブログではめったに紹介しないのだが、気になる歌とコメントが出たので、それを書き留めておきたい。 芋の葉にたまりし露をころがしてをさなきころの われは遊び…

西行もどり松

藤澤宿から江ノ島へ詣でる路に「江ノ島弁財天道標」がいくつも立っている。その中に片瀬二丁目に「西行もどり松」の道標がある。平成五年二月に藤沢市教育委員会が立てた案内板には、次のように書かれている。 杉山検校が建てた道標のうち、この道標には「西…

石楠花

ツツジ科ツツジ属無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節の総称。主として北半球の亜寒帯から熱帯山地までのきわめて広い範囲に分布している。ネパールの国花。花言葉は「威厳、荘厳」。 石楠花に手を触れしめず霧通ふ 臼田亜浪 石楠花に躍りゆく瀬や室生…

梅雨雑詠(3)

湘南の海辺では、梅雨の時期には、来る盛夏の海水浴客を呼び込むために、例年のように海の家が盛んに建てられている。これらは9月になると撤去されて閑散とした海辺にもどるのだが。ところでこうした海の家では、緊急地震速報が発令された場合、どのように…

梔子の花

くちなしはアカネ科の常緑低木。その花の清楚な白と甘い香りが誰にも好まれる。八重咲きのものと一重咲きのものとがある。単に「梔子」という時は、その実を指して秋の季語になる。紅黄色で食品染料になる。 薄月夜花くちなしの匂ひけり 正岡子規 梔子の花見…

アマリリス

中南米が原産地。3,4月に球根を植える。人工分球でふやす。女性の名前が花の名前になった。並はずれた美しさ、誇り、虚栄 などを象徴する。言葉の響きがなんとも快い。 アマリリス眠りを知らずただ真紅 堀口星眠 あまりりす妬みごころは男にも 樋笠 文 首…

ユキノシタ

漢字では鴨足草あるいは虎耳草と表記する。前者は、花の形から、後者は葉の形からきている。 ふもと井や湯女につまるる鴨足草 飯田蛇笏 夕焼は映らず白きゆきのした 渡辺水巴 鴨足草咲く井やお菊ものがたり 水原秋桜子 陋屋の裏見同志に鴨脚草 中村草田男 釣…

西瓜

百科事典によると、スイカは熱帯アフリカ原産のウリ科のつる性一年草で、古代エジプト時代から種を食用にするために栽培されたという。わが国には16世紀か17世紀頃に中国を経て渡来したという。果肉用のものは明治初年に米国から移入された。その形、色…

鑑賞の文学 ―詩 篇(5)―

今年一月十五日に初版が出た岡井隆の『森鷗外の『うた日記』』を読んでいる。森鷗外の『うた日記』は、彼が日露戦争に軍医部長として従軍した際に、詩・短歌・俳句で綴った日記である。岡井はこの作品についてさまざまな面から鑑賞・注釈を書いている。高見…

梅雨雑詠(2)

小田原城の庭には、紫陽花と花菖蒲が咲いていた。驚いたことに駐車場だったところを閉鎖して、発掘調査が始まっていた。御用米曲輪の整備だという。この曲輪には、徳川幕府のための米などを蓄える蔵が6棟あった。調査の結果、法面の裾に溝を持つ御用米曲輪…

梅雨

ばいう、つゆ。黴雨とも書く。語源は、梅の実が熟するころの雨、あるいはカビを生じる雨を意味するという。夏至を挟んで前後二十日ずつの雨の期間を指す。「走り梅雨」は、本格的な梅雨に入る前のひと時の梅雨模様。「梅雨明り」は、梅雨期の夕方、雨がやみ…