天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

カツオ

鰹はスズキ目サバ科。黒潮に沿って群棲する。北海道沖から南洋諸水域で獲れる。地方によって色々な呼び名があるようだ。マンダラ(北陸)、カツ・ヤツ(宮城)、サンゼンボウ(伊豆・静岡) など。カツオの腹部の縞模様は、生きている時はあまりはっきりして…

鑑賞の文学 ―俳句篇(40)―

どれも口美し晩夏のジャズ一団 金子兜太 前衛俳句における「詩としての真実」の例である。この句が作られた現場に居合わせた酒井弘司(「海程」創刊同人、「朱夏」主宰)によれば、場所は新宿の喫茶店で、ラテン音楽のバンドを聴いた夜のこと。時期は早春で…

貝母(ばいも)

編笠百合のことでユリ科バイモ属の半蔓性多年草。乾燥させた鱗茎が貝母と呼ばれる。観賞用として栽培される。中国原産。粉末が去痰・鎮咳・催乳・鎮痛・止血などに用いられるが、心筋を侵す作用があるので副作用として血圧低下、呼吸麻痺、中枢神経麻痺を引…

春分(3)

暦で四番目の節気。周知のように太陽が春分点に達して昼夜の時間が等しくなる。3月21日頃に当たる。彼岸中日、春分の日として祝日。 春分のおどけ雀と目覚めけり 星野麦丘人 春分や手を吸ひにくる鯉の口 宇佐美魚目 正午さす春分の日の花時計 松岡ひでたか …

春分(2)

遊行寺の白もくれんが咲いたので、円覚寺仏日庵の情況も見に行った。やはり咲いていた。龍隠庵の庭には、貝母、ミツバツツジ、ゲンカイツツジ、幤辛夷、おかめ桜、土佐水木などの花に出会えた。また黄梅院の庭には三椏の黄色い花が咲きかけていた。東慶寺に…

春分(1)

藤沢・遊行寺の放生池の縁に木蓮の大木が立っている。以前にもご紹介したが、この季節には見事な白い花が咲く。今年の春分の日には、花は開ききってはいなかったが、もこもこの花が枝にたくさんついていた。 春分やムクドリ群れて騒がしき 白もくれん放生池…

田打

田の土を起こして柔らかくして、田植えに備える作業で、「田返し」ともいう。春の季語。傍題に、春田打、田を打つ、田を返す、田を鋤く など。耕運機が入らない狭い棚田などでは、人力で田を返すことになり、重労働に変わりない。 生きかはり死にかはりして…

春の里山(2)

横浜市の舞岡公園を訪ねた。湿地帯や溜池の廻りに珍しい野鳥が出てきていないか、芹や土筆が生えていないか、探して歩いたが、いずれも見つけられなかった。ただ一羽の白鷺が池の辺にぽつねんと佇むのみ。咲きかけた薄紫の幤辛夷や万作、沈丁花などはあった…

マグロ

鮪はスズキ目サバ科。暖かい海に分布する回遊魚。沿岸漁と遠洋漁とがある。小型をメジ、大型をシビという。クロマグロ、メバチ、キハダ、インドマグロ、ビンナガなどの種類がある。寿司でおなじみのクロマグロは、ホンマグロとも言われ体長3メートル、体重40…

クロッカス

アヤメ科クロッカス属の総称だが、花を楽しむ園芸植物としてクロッカスの名が流通している。耐寒性で秋植え球根植物。原産地は地中海沿岸から小アジア。早春に花はほとんど地上すれすれのところに咲く。黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなど多彩であ…

春の里山(1)

雪の消えた里山・新林公園(藤沢市)を歩く。古民家の前の小さな梅の林には花が残っていた。今まで気付かなかったが、どの木も白梅と薄いピンクの紅梅が混在していた。花梅には「思いのまま」といって、淡紅と白、紅、絞りなどを1本で咲き分ける種類があるの…

『青き大氷河』(続)

染宮千鶴子さんの第三歌集『青き大氷河(Glacier Blue)』感想 の続き。(3)直喩: 「やうな」「ごとく」「・・する思ひ」「・・する がに」といった直喩表現が多く使われている。それぞれの例 を次にあげる。 負荷軽く設定なしたるパソコンの画面のやうなり…

『青き大氷河』

「短歌人」同人・染宮千鶴子さんの第三歌集が出た。Glacier Blueというルビがついている。 次の歌から見てゆこう。 できぬことできるやうになる日日を残してくれし それで良いですか 夫の死後に私に残された日々。それは夫と生活していた時代にはなかなかで…

猿子(ましこ)

アトリ科の鳥の総称。北海道と青森県の草原で繁殖し、冬に南下して高原や低地の林にすむ紅猿子が一般的。ピッポ、ピッポと囀る。 駒鳥は大きくまし子は小さく飛ぶ数もて来る尾長やかまし 土屋文明 紅梅は散りて二、三を残すのみ花の精めく紅猿子(ましこ) 来…

登呂遺跡

三保の松原に行った日は焼津のかんぽの宿に泊った。翌日に静岡駅からバスで登呂遺跡に行った。ここにも以前に来たことはあるのだが、景観は全く違っていた。今は公園になっている。 田おこしの登呂の遺跡や水ぬるむ 田を返す漢がひとり登呂遺跡 鶺鴒が小走り…

羽衣の松

謡曲「羽衣」に傾倒したフランスのバレリーナ、エレーヌ・ジュグラリスのことは、今回三保の松原を訪れるまで知らなかった。立派な石碑が立っている。彼女は1951年7月、憧れの三保の松原を見ぬままパリで没した。石碑は「私の髪をぜひ羽衣の松近くに埋めて欲…

三保の松原

万葉の時代から知られた歌枕である。松原には、次の和歌が立て札になっている。 盧原(いほはら)の清見の�啗の三保の浦のゆたけき見つつ 物思ひもなし 万葉集・田口益人 忘れめや山路打出て清見がたはるかに三保の浦の松原 続古今集・中務卿親王 清見潟富士の…

滴る

広辞苑には、(1)水などがしずくとなって垂れ落ちる (2)美しさやみずみずしさがあふれるほどである と説明されている。 外(と)に立てば衣(ころも)うるほふうべしこそ夜空は 水の滴るが如(ごと) 長塚 節 とろとろに摩(す)られし豆がつづけざまに石臼(いし…

春の腰越

BS朝日「ニッポン絶景街道」の鎌倉街道編を見ていたら、驚いたことにわが定番の散策スポットばかりが紹介されていた。鶴ケ丘八幡宮、うなぎの鶴屋、大仏の高徳院、成就院の山門から望む由比ヶ浜、極楽寺切通し、力餅屋、腰越の満福寺、藤沢の義経首洗い井…

あけび

アケビ科の落葉性の木性つる植物。本州から九州、東アジアに分布、山野にはえる。果実は長楕円形で7〜10cm。果皮は紫色を帯び、果肉とともに食用になる。木の部分は薬用。秋の季語。 幼童のわがあこがれし秋の実の山のあけびを執りてなげかふ 上田三四二 …

鰈(かれい)(2)

マコガレイ、イシガレイ、メイタガレイなどと種類は多い。若狭湾で獲れるヤナギムシカレイの子持ちは最上品。また瀬戸内海で獲れるものを干した干鰈は上等品と言われる。別府湾で獲れる城下カレイも美味。旬の時期は種類による。三月、四月はどの種類も旬か…

鑑賞の文学―短歌篇(37)―

以前にも数回ご紹介した横浜の「万葉集を読む会」が、年一回発行してきた『丘のうえの樹』が今年で最終回になるという。その冊子を短歌人会の川井怜子さんから頂いた。参加しているメンバーが万葉集をいろんな角度から読み込んで勉強されていることがよくわ…

鰈(かれい)(1)

カレイ科の魚の総称。カラエイの転化という。目が体の右側にある。対して鮃(ひらめ)は左側にある。孵化当初は目の位置は他の魚と同様に両側にあるが、成長に伴って片側に移る。目の在る側は暗色で周囲の色彩により変化する保護色である。裏側は白い。 いまわ…

阿修羅(2)

日本においては、特に明治以降は、奈良興福寺の阿修羅像が圧倒的に有名。三面ある顔の表情は、少年から大人への成長過程(反抗→内省→決意)を象徴するという。老若男女に最も人気のある仏像といってよい。 かなしみを眉根に耐へて合掌の阿修羅は佇(た)てり興…

阿修羅(1)

インド古代の鬼神。仏教では仏法を守護する八部衆の一つ。バラモン教では常に帝釈天と戦う悪神ともいう。須弥山の東あるいは北の大海に住むという。あすら。修羅。 須弥のうへはめでたき山とききしかど修羅のいくさぞ猶 さわがしき 慈円 我が憤怒阿修羅のご…

鑑賞の文学 ―俳句篇(39)―

みちのくの淋代の浜若布寄す 山口青邨 前回、森澄雄の俳句について述べた「詩としての真実」が、この句についても言えることが、三月号の「古志」での大谷弘至主宰の解説「俳句のために」で分った。大谷主宰も森澄雄と同様な考え方である。以下に大略を引用…

松田山の河津桜と菜の花

今年も例年どおり出かけた。小田急線で渋沢を通る時、春雪に輝く丹沢の山々が見えた。このあたりは信州の山麓の村に似たような情緒があり、住んでみたい気分になる。松田山の斜面にひろがる河津桜は、新松田駅に近づくと電車の中からも見えるので、乗客がざ…

芽吹く

樹木が新芽を出すこと。「木の芽」が春の季語で、「芽吹く」は、芽立ち、芽組む 等と共に傍題。以下の石塚友二の句は、鎌倉鶴ケ丘八幡宮の大銀杏のことだが、先年の台風で倒れた。現在は根株が残されて芽吹きを待っている。右の画像参照。 隠岐やいま木の芽…

探梅行―田浦―

わが探梅行の最後の場所として横須賀市田浦の梅林に行ってきた。梅の花が満開なら探梅と言わないので、梅林のどのあたりが咲き始めているかを見ることになる。谷間には先日の雪が残っていたが、風はあたたかく快かった。 雪のこる田浦裏山梅まつり 残雪の風…

鑑賞の文学 ―俳句篇(38)―

ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 森澄雄 この句はどこで詠まれたと読者は想像して鑑賞するであろうか。私の場合、関東なら福島県の須賀川牡丹園、関西なら奈良県の長谷寺あたりの牡丹の名所での作とばかり思っていた。ところが、森澄雄の『俳句への旅』の…